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中高生がなりたい職業から考えるIT業界の働き方

2017年10月02日

政策調査部 研究員 菅原 佑香

今どきの男子中高生がなりたい職業の第1位は、ITエンジニア・プログラマーだという。これは、ソニー生命保険株式会社が、2017年3月に、全国の中高生に対し「中高生が思い描く将来についての意識調査」をインターネットリサーチで調査した結果による。少し前までIT業界は、「新3K」(きつい・厳しい・帰れない)といった言葉で表されたように、長時間労働で離職率の高い業種であるというイメージが強かったが、最近では、スマートフォンの普及などでインターネットの利用が身近になったせいか、少しずつ職種のイメージに変化が出てきているのかもしれない。

確かに、IT業界は長時間労働であるというイメージが強いが、実際はどうだろうか。週60時間以上働く雇用者の割合は、2016年(平均)だと全産業の平均が7.7%であるのに対して、情報通信業は8.2%とやや高い。だが、3年前と比べれば情報通信業は10.6%から2.4%ポイントの低下となり、改善が見られる(図表)。

しかし、IT業界で長時間労働が多い背景には、システムの仕様変更や厳しい納期、限られた予算といった顧客側の事情や、見積もりや人の割当て、品質管理の失敗といった受注側の事情があるといわれている。また、多重下請構造による業務のしわ寄せなど、IT業界特有の受発注の仕組みや仕事の特性も長時間労働の要因であるという(※1)。24時間365日いつでもどこでも使えるサービスが当然となってきた時代の裏側には、夜中も休日も返上して働かなければならないエンジニアの存在がある。こうした業界での働き方改革は、取引先や顧客からの依頼がIT業界とその顧客の双方にとって合理的か、という観点からの商慣行の見直しなくしては、うまくいかない面も大きい。

この点に関して、まさに9月22日、日本経済団体連合会や日本商工会議所、経済同友会など110の経済団体が、「取引先が労働基準関連法令に違反しないよう、配慮する」、「契約時の適正な納期の設定に加え、仕様変更・追加発注を行った場合の納期の見直しなどに適切に対応する」、「取引先の休日労働や深夜労働につながる納品など、不要不急の時間・曜日指定による発注は控える」などからなる「長時間労働につながる商慣行の是正に向けた共同宣言」を公表した。IT業界に限らず、これが、日本の長時間労働につながる商慣行の改善のきっかけとなるのか、今後の動きに注目したい。

IT業界は、人々の暮らしをより豊かにするための、社会基盤を支える重要な役割を果たしている。第4次産業革命ともいわれ、人工知能(AI)やビックデータの活用が今後ますます求められる社会において、次世代のIT業界を担う人材の確保は、国家的な課題である。いまの中高生が将来働き始める頃には、IT業界の働き方は大きく変わっているだろう。IT業界で働きたい、働き続けたいと思えるようなIT業界の「働き方改革」に期待が寄せられる。

(※1)厚生労働省「働き方・休み方改善ハンドブック 情報通信業(情報サービス業編)」参照。

週60時間以上働く雇用者の割合(全産業と情報通信業)

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