無形文化の再発見
2017年09月14日
月曜から金曜の毎日、日本各地に今も息づいている風習や芸能、また、その土地特有の暮らしを紹介する5分間のミニ番組がある。もう、おそらく3年程度、それを週末にまとめて視聴するのが習慣になっている。
私には知らないことばかりで、どの回にも興味をひかれるが、特に、引き付けられるのは各地の伝統芸能とそれに熱中する若者の姿である。例えば、「中国山地の神楽」では、週末に開催される神楽の競演会とそれに挑む若者の姿が描かれている。神楽とは、神々の物語を舞として伝えるもので、番組によれば、中国地方の神楽団の数は800を越えるという。伝統芸能に引き込まれ、毎日の練習と本番の舞を通じて、汗と笑いと涙にあふれる若者。もはや伝統になった感のある若者像がそこにある。
また、季節がら、最近は各地の盆踊りを題材にしたテーマも多い。盆踊りと言えば、やぐらを組んだ公園に音量重視(つまり音質は度外視)の拡声器で東京音頭や炭坑節が流され、そこに地域の老人とお菓子目当ての子供が集まっているイメージだとしたら、とんでもない。有名どころで岐阜の郡上踊り、徳島の阿波踊りは、先の中国地方の神楽と同様に若者も加わった熱気で溢れかえっている。富山の越中八尾おはら風の盆は、踊り手にそもそも年齢制限があって10-20代の若者が主役である。それが年配による地方(じかた)の演奏、歌と一体になり、それを1日平均9万人の来場者が見守る。
こうした映像を見るたびに、日本の伝統芸能の豊かさと、今も続くその熱気に心を躍らせると同時に誇らしく感じる。ところで、ユネスコの世界遺産と言うと、最近の「宗像・沖ノ島と関連遺産群」など、その登録が決定される度に話題になるが、世界で見ると世界遺産総数1,073件のうち日本は21件に過ぎない。上位には、中国を除いて欧州各国が並び、日本の登録数は12位である。
一方、4年前に「和食」の登録で話題になったユネスコ無形文化遺産では、実は、日本は中国に続く2位の登録数を誇っている。初期の登録は、能、人形浄瑠璃、歌舞伎といった一部の専門家集団による芸能によるものだが、最近では、民間伝承された文化・芸能に広がっている。2016年の登録は、各地の祭り33件を束ねた「山・鉾・屋台行事」であった。今後も、秋田県の男鹿のなまはげなど、地方の伝統芸能や行事を中心に広がることが予想されている。
世界の中の日本として眺めれば、日本の魅力の特徴は、有形な産物以上に、こうした世界的にも価値ある無形文化が多いことと言えるのかもしれない。「モノ消費からコト消費へ」といった潮流も相まって、地方に多く存在する無形文化を活かす視点も忘れてはならない。
「その価値ある伝統も、今後は消えていくのでは?」
一般論ではその通りだが、まずは、見て、触れて、そして、そこに熱中する若者を応援することが先だ。
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- 執筆者紹介
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マネジメントコンサルティング部
主任コンサルタント 神谷 孝
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