試してほしい制度貯蓄

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2017年08月16日

  • 土屋 貴裕

筆者は、親戚や知人から、「会社の年金制度が確定拠出年金に変わったのだがどうすればいいか」、「退職後に向けてどう運用すればいいか」、という相談を受けることがある。

近年、制度貯蓄への政策の支援が行われ、資産形成に向けた受け皿が整備されてきた。NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)などであり、これまでの年金財形や住宅財形、ミリオン、社内預金や従業員持株会なども制度貯蓄の一部に挙げられる。制度がたくさんあると、それぞれを理解して比較し、自分にあったプランを選ぶことも大変だ。もちろん情報がないわけではない。わからないことをネット上で検索すると膨大な情報があるが、むしろ情報が過多で選べないので、「まとめサイト」がたくさんあることに気付く。知識を学んで理解することは大変なので、結論だけアドバイスしてほしい、というのが現実なのだろう。

だが、経済や市場は日々変動し、必要なアドバイスは変化する。人それぞれの好みや事情を踏まえると、どうすべきかへの答えは「人によって、またタイミングによって異なる」としか言いようがない。やっかいなことに、正しい情報をわかりやすく伝えるのは容易でなく、わかりやすさと正しい情報提供は裏腹という面もある。

新たな制度の一つであるNISAは、英国のISA(Individual Savings Account;個人貯蓄口座)がモデルになった。ISAはわかりやすいシンプルな制度であったことが評価されているようだ。また、個人の資産形成に向けた本命になるかもしれないiDeCoは、米国におけるIRA(Individual Retirement Account;個人退職口座)と似た制度と言える。米国のIRAは、退職後に向けた資産形成だから、リタイアするまでは原則として資金を引き出せない。であれば、いろいろ試してみようということで、多くの家計がIRAなどを経由して投資信託を保有し、米国内外の株式や債券を間接的に保有するようになった。IRAは家計が投資を経験し、訓練する場所になったとされる。結局のところ、様々な目的の資産形成のために、どのような制度を使うべきなのか、やってみなければわからず、適宜、周りのアドバイスを受けつつ経験を積んでいかなければならないのだろう。

単純明快な制度が一つだけ、ということはあり得ないから、最終的には資産形成に向けた継続的なアドバイス体制の構築が最も重要な課題になりそうだ。退職まで時間がある若年層には、いろいろ試して自分にあった資産形成方法を見つけてもらいたいと思う。

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