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MAGAnomics(マガノミクス)の黄昏

2017年08月03日

経済調査部 シニアエコノミスト 近藤 智也

各種世論調査によると、日本の安倍内閣の支持率が急激に低下している。比較的高い支持率を維持してきたものの、就任5年目を迎えた2017年に入って様々な躓きが表面化し、(調査主体によって水準は異なるが)年初の50~60%台から足下で20~30%台と就任以来最低水準に落ち込んでいるという。

ほぼ同じタイミングで、支持率が就任以来最低水準を更新しているのが米国のトランプ大統領である。但し、こちらは、安倍政権と対照的に政権発足から200日も経っておらず、かつ戦後の歴代大統領と比較しても、就任半年時点の支持率が最低であると指摘される。しかしながら、政権スタート時の支持率が45%であったように、そもそも国民の期待度が低かった。さらに、弾劾の可能性まで指摘されるスキャンダルに見舞われている現状を考慮すると、安倍政権と同じ30%台でも、トランプ大統領はむしろ踏ん張っているとも評価できよう。

そのようなトランプ大統領の過去200日間を振り返ると、TPPやパリ協定からの離脱表明、NAFTAの見直し開始など一部の公約を進捗させる一方、当初目指した移民規制は司法に阻まれ、相当な時間をかけて取り組んできたオバマケア撤廃・置換は、上院で法案が否決されて頓挫している。このように、法案成立が必要な主要政策についてはほとんど成果を挙げられていない。

本を正せば、医療保険制度改革を巡る混乱は、前任のオバマ大統領が数に物を言わせて強引にオバマケアを成立させたことに端を発する。世論の強い反発を受けたオバマ大統領の支持率は急低下し、民主党は2010年の中間選挙で敗北、オバマケアを巡る対立はその後のオバマ大統領の政権運営の足かせとなった。2017年、政権を奪い返した議会共和党はオバマケア撤廃・置換を目指したが、一丁目一番地的な公約実現に待ったをかけたのが、共和党内の対立というのは何とも皮肉なことであろう。

ロシア疑惑や政権内の人事を巡る対立で早くも袋小路にあるトランプ政権だが、“Make America Great Again(米国を再び偉大に)”という選挙中からのフレーズを捩って、まだ日の目を見ぬ経済政策を“MAGAnomics(マガノミクス)”と呼ぶとマルバニー行政管理予算局長が発表した。ただ、税制改革やインフラ整備など財源の絡む政策がスムーズに実現する可能性は遠のくなか、成果を急ぐトランプ大統領が、通商政策をターゲットにする懸念は相対的に高まっている。しかし、これは日本や中国など世界との摩擦を引き起こすリスクがあり、トータルで見て米国の利益になるかは不透明である。

5年目に入ったアベノミクスは恐らく教科書に載るだろうが、マガノミクスが歴史に名を遺すには、80年代、分割政府(※1)の下で進められたレーガノミクスのような超党派の協力が不可欠となろう。残念ながら、過去200日間を見る限り、その気配は感じられない。逆に、対ロシア制裁強化やセッションズ司法長官への擁護といった、トランプ大統領の行動に制約を課そうとする超党派の動きがみられ、トランプ大統領の呟きは一段と過激さを増していく恐れがある。

(※1)「大統領の所属政党と議会の上下両院又は上下院の一方の多数派が異なる状況は『分割政府』と呼ばれる」 松井新介、「『ねじれ』状況下の米国連邦議会」、参議院『立法と調査』2014. 11 No. 358

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近藤 智也

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