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そのサービス、おカネかかりますか?

2017年07月06日

調査本部 執行役員 調査本部副本部長 兼 金融調査部長 保志 泰

先般、宅配便大手が値上げに踏み切ることを正式発表した。人手不足を一つの理由として挙げているが、マクロ的な雇用情勢が逼迫する中で、サービス価格が本格的な上昇へと向かう象徴的な出来事になるのかどうか注目されている。それにしても30年近く値上げをしてこなかったというから、一つの転換点となることは間違いないだろう。

よく言われるが、日本で「サービス」というと、無償で提供される顧客サービスのイメージが強く、ましてや、サービスの質を向上させたといって値上げするようなことは考えにくいだろう。今回、宅配料金が値上がりしたとしても、ネット通販でモノを購入している消費者が、その転嫁を素直に受け入れるかどうかわからない。かく言う筆者も、何回注文しても追加の送料はかからない会員制度の恩恵に存分に与っており、もし1件1件送料が請求されるようになったとしたら、頻繁な注文は考え直すに違いない(ちなみに、筆者は宅配ロッカーを利用しているので、それほど再配達の迷惑はかけていないはずだが)。これまで、対価の値上げなしに利便性の向上を享受することに慣れ過ぎているのかもしれない。

サービスといえば、金融サービスの価格には、違う意味で焦点が当てられている。例えば金融商品の運用手数料や販売手数料が適切なのか、場合によっては高すぎるのではという指摘がある。近年の超低金利時代の中、手数料率が高く見えるようになったことが一つの背景にある。そうした手数料にはコンサルティングの費用やリサーチの費用など様々な費用が含まれており、それが不透明という指摘もある。それは何も日本に限ったことではない。欧米ではリサーチにかかる費用を分離する動きが強まっている。

ではこのような手数料の分解を、日本で、しかも個人向けに導入したらどうなるだろうか。金融機関が顧客に最適なコンサルティング・サービスを提供したとしても、これまで明示してこなかったサービス料を顧客が抵抗感なく支払うかどうかは疑問だろう。「無償のサービス」との意識も根強く残るかもしれない。調査リポートの提供などリサーチ費用についても同じだ。質の高いリサーチには一定のコストがかかるが、顧客がその価値を十分に認識してくれなければ、リサーチサービスを提供する金融機関が減っていく懸念が強い。短期的にはサービスの質低下という悪循環に陥る可能性も否定はしきれないだろう。

海外には、もともとサービスに対価を支払う文化が定着している国も多い。飲食店などでチップ制を取っている国などはその典型といえるだろう。対して、そういう文化が定着していない日本で、それを導入していくことは簡単なことではないと思われる。

話は元に戻るが、今回の宅配料金の値上げが、そうした「サービス=タダ」の発想が変わる一つの転機になれば、様々な分野でサービス業の付加価値向上に向けた期待も高まりそうだが、果たしてどうだろうか。

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