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文化芸術の経済力を地域に生かす

2017年06月15日

コンサルティング本部 顧問 三好 勝則

文化芸術が持っている経済力に着目し、地域の活性化に生かす方策を考える。
文化芸術は創造であり、有形無形の作り出されるものを他の人が手に入れることで経済価値が生まれる。伝統工芸は、技術とネットワークで特徴的なものづくりが継承され、各地域で産業を形成してきた。伝統工芸は生産額が減少しているものの(※1)、新たな意匠開発や産地間連携に取組み、和食人気ともあいまって、評価が高まりつつある。
地域にある歴史的文化資源を地域の人たちが活動の歴史とともに保全し、価値を見直す動きも盛んである。町並みや建造物、催事は、その地域で人々がどのように仕事や生活をしてきたかを反映している。その特徴は、地形や地理、気候が異なるため、地域ごとに多彩な態様を示していることである。この特徴を魅力として捉えるのが観光の本来の姿である。観光は流行や真似事ではなく、地域が持つ固有の価値をどのようにして対象にするかである。
また、地域の特性は人の暮らし方に及んでくる。効率性を求めて集まる都会に対し、自然環境や心の安らぎ、感性を大切にしたいと田舎を選択し、移住や複数居住を志向する動きがある。訪れたときに魅力を感じ、人を引き付けるのが地域の文化資源であり、コミュニケーションを通じた人と人の関係づくりになる。

以上のものづくり(産業)、場づくり(観光)、人づくり(居住)は相互に関連することで、地域の経済に貢献することとなる。そのための仕組みづくりも重要である。まずは、地域の歴史などを見詰め直して、文化資源を認識し、将来に向けた基盤を整備することである。文化・伝統を面的に捉えて地域のストーリーとすることにより地域のブランド化を目指す「日本遺産」が、文化庁によって認定(※2)されている。富山県高岡市では、加賀藩前田家が商工業本位の町とする政策を実施し、鋳物や漆工の生産と商業取引で富を生み、祭礼など町民が担う地域の文化を形成した。それらを今日まで継承し、ソフトのインフラ整備としたことが、平成27年3月の北陸新幹線開業というハードのインフラとあいまって、観光客を引き付けた。
石川県金沢市では、地域の歴史ある文化資源を保全及び開発し、居住を誘導するために条例を制定することにより政策の方針を明確にして、地域の人たちの協力を得た。市が芸術大学を設置するなど学術文化を最大の目標とし、その結果として観光に繋がっている。
文化芸術が地域の経済に効果をもたらすことを、住民と地方自治体は長期的視点を持って共有することが肝要である。
さらに、企業が文化芸術を通して地域に関わることの重要性も見逃せない。企業が行うメセナ活動に関する調査(※3)では、地域文化の振興、芸術・文化による次世代育成とまちづくり、企業と地域社会との関係づくりなど、地域に関する項目が上位に位置している。企業による地域への支援は、地域と企業が連携する「企業文化」を醸成することにより、地域経済の活性化を促進することとなる。
文化芸術を日常に埋もれさせたり、あるいは一時的な宣伝での効果を狙うことではなく、人のつながりや地域の個性を育むことが、需要を呼び起こし地域の価値を高めることとなる。これからの日本経済の柱の一つとしたい。

(※1)一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会の調査による。
(※2)平成27年度から29年度までに54件が認定されている。
(※3)「2016年度メセナ活動実態調査報告書」公益社団法人企業メセナ協議会 2017年3月

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