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地域の未来を変える方法

2017年03月23日

リサーチ本部 執行役員 リサーチ担当 兼 政策調査部長 鈴木 準

人口減少時代を進む中、人が減ることによるマイナスの影響を心配する声がますます広がっているように感じる。これまで人が増えてきたことでうまくいったわけではない(うまくいっていたから人が増えていた)と思うのだが、人が減ることを理由にしてうまくいっていないという議論が圧倒的に多い。

そもそも、人が減ることは十分に予測できているのだろうか。「エコノミストによる経済予測は当たらないが、人口の見通しは確実である」という言い方を耳にすることが多い。人口動態には強い慣性(人口モメンタム)が働いているから、その限りにおいて先行きを把握しやすいことを直感させる。

しかし、例えば、国立社会保障・人口問題研究所による1997年の都道府県別将来推計人口(1995年の国勢調査が基準)での2015年の将来推計値と実績を比較すると、奈良県は14.2%、山梨県は12.9%、茨城県は11.1%も現実が下振れしている。反対に、東京都は29.1%、大阪府は10.2%、愛知県は5.5%上振れしている。

簡単には変化しない慣性が前提にあるにもかかわらず、わずか20年先の推計値でこのズレだから、より長期については言わずもがなである。都道府県より規模が小さい各市町村の人口ともなれば、その将来推計値を予測値として扱うのは、よほど慎重でなければならない。

将来推計人口は当たらないと言っているのではない。人口の将来推計は人口学の成果として極めて精緻である。ただ、それは現況の将来への「投影(プロジェクション)」であって「未来予測」ではない。人々は、仕事があって賃金が高い地域、リーズナブルな費用で生活できる地域に移動する。移動しなくても、賃金を高めることに成功した地域では子供を産み育てやすくなる。人口推計では、そうした将来のダイナミズムは考慮されていない。

また、人口が減少すると消費が減る、住宅が余る、地価が下がる、果てにはデフレの原因が人口減少であるなど、疑問を覚える論調があまりにも多い。紙幅の都合で一つひとつ議論できないが、消費も住宅の価値も、これまで人口分だけ増えてきたのではなく、1人当たりで増えた分が圧倒的に大きい。

人口が減ると分かっているなら、各地域は社会や経済の仕組みをそれに合わせて変革することがチャンスになる。それに取り組まずに、人口減少を心配するのは矛盾している。当面の人口減少をきっかけに社会の運営に知恵を絞った地域では、子供や人口流入が増え、結局はうまくいくだろう。あれもこれも人口減少が原因だという言い訳をやめれば、未来は大きく変わるに違いない。

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鈴木 準

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