サマリー
◆昨年に引き続き2026年度税制改正でも「年収の壁」とされる所得税の課税最低限の引上げが政治課題となっている。本レポートでは、様々な方法で所得税の課税最低限(基礎控除等)の追加引上げを実施した場合の家計と財政への影響を試算した。
◆仮に国民民主党の主張通り所得税の基礎控除を一律113万円に引き上げると、国の税収は約1.7兆円減少する。家計では、年収160万円以下の者は所得税非課税のため税負担は変わらず、年収200万円以下の者の減税も年間0.4万円にとどまる。一方、年収1,000万円の者は年間11.2万円の減税になり、高所得者の減税額が大きくなる。
◆一方、所得控除ではなく税額控除によっても課税最低限の引上げは可能だ。税額控除を導入すれば、高所得者への減税額を一定に抑えつつ、財政への影響を抑制できる。大和総研では、税額から引ききれない控除額につき「労働所得に係る社会保険料」の範囲で給付を行う「社会保険料還付付き税額控除」を提案している。社会保険料還付付き税額控除であれば、「働く低所得者」への支援を強化し、実際の手取り減少を生じさせている「社会保険料の壁」の緩和にも資する。
◆現在の日本の税・社会保障の負担構造は、低所得世帯の純負担率が高く、かつ、所得税の累進性が低くなっている。現状の課題を踏まえると、所得税の課税最低限を引き上げるのであれば、その方法は、基礎控除の引上げよりも給付付き税額控除の方が望ましい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
給付付き税額控除実現に向けたロードマップ
「社会保険料還付付き税額控除」なら早期実現も可能
2025年11月26日
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
同じカテゴリの最新レポート
-
教育資金負担を支える子ども支援口座制度
台湾でも新たな子ども支援口座の構想が浮上
2026年07月06日
-
2012~2025年の家計実質可処分所得の推計
名目賃金増で各年代とも実質可処分所得が増加トレンド入りか
2026年06月15日
-
2027年1月開始 「こどもNISA」の概要
中学生以降は教育費・生活費目的の非課税払出しが可能
2026年05月26日
最新のレポート・コラム
-
米雇用者数は減少、過去分も大幅に下方修正
2026年7月米雇用統計:失業率は低下も、労働参加率の低下に懸念
2026年08月10日
-
2026年4-6月期GDP(1次速報)予測(改訂版)~前期比年率+2.5%に下方修正
直近公表の基礎統計を踏まえ、個人消費と外需をそれぞれ下方修正
2026年08月10日
-
指名委員会等設置会社の見直しによる企業への影響
機関設計の選択にとどまらないガバナンスの実効性確保が重要
2026年08月10日
-
EUにおける株主確認制度
SRDⅡ(EU第二次株主権利指令)に基づく株主調査の概要と課題
2026年08月07日
-
コーポレート・ガバナンス報告書の更新時期をどう考えるか
2026年08月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
-
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
-
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
-
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
-
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日

