「女性活躍」は好きじゃない
2017年03月06日
2016年、女性の労働参加率は前年より0.7%pt上昇し、50.3%になった(※1)。25~54歳に限ると、労働参加率は76.2%である。中でも若年層の労働参加が進んでおり、現在、25~29歳女性の就業率は、女性の労働参加が進んでいることで知られるスウェーデンを含む欧米各国よりも高い水準である。
女性の労働参加が進んでいる裏で、気になるデータが存在する。35~44歳女性の労働力化の伸びがここ数年鈍化しているということだ。この年代は、結婚や出産、育児期に女性の就業率が一時的に落ち込む、いわゆるM字カーブの谷の部分に該当する。国際比較してみると、この年代は他の年代と比較して労働力率上昇の伸びしろが大きいように思われるが、労働力化の動きはそれとは裏腹である。
この背景として考えられるのは、この年代で、現在の労働市場で働きたい人の多くは既に労働市場へ参入していて、非労働力化している人たちの多くは、主体的に専業主婦など、非労働力であることを選択しているという可能性だ。そのため、この年代の非労働力人口の中で、労働市場での就業を選ばない人の割合が以前と比較して高くなっているのかもしれない。実際に、35~44歳女性の非労働力人口(就業内定者を除く)のうち、「就業を希望する」と答えた人の割合は縮小傾向にある。
最近は「女性活躍=女性の労働参加」という文脈で語られることも多いが、専業主婦という選択も否定されるべきではなく、それもまた、一つの活躍のあり方である。
確かに、他国と比べてジェンダーギャップが大きかった日本にとって、女性の社会進出を支援する施策が必要であったことには違いないし、超少子高齢化が進む日本では、女性も含め広く労働参加を求めなくてはならないという事情も理解できる。しかし、近頃は、「女性活躍」という言葉が独り歩きしてしまっているように感じる。
筆者も普段使ってしまっているが、この「女性活躍」という言葉が、働いている人、働こうとしている人、専業主婦を選んでいる人、様々な人にとって、そして企業にとって、負担になっているのではないか、と最近考えるようになった。「女性活躍!女性活躍!」と言われるより、「様々な選択肢の中から自分のあり方が選べますよ」などと言われた方が、結果的に労働参加も進むようにも思える。
そう言えるようになるには、女性に限らず皆が、様々な選択肢を可能にする環境をつくることがまず必要だろう。そして、各々が自分や家族の幸福最大化を目指して、より良い選択ができ、どの選択も尊重されること、それが今の日本に求められている姿ではないだろうか。
(※1)総務省「労働力調査」
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経済調査部
エコノミスト 山口 茜
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