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地域金融機関の事業性評価は「マーケットイン」の観点で

2017年02月08日

牧野 正俊

2016年10月に金融庁が公表した「平成28年事務年度 金融行政方針」は、「金融仲介機能の十分な発揮と健全な金融システムの確保」のために、「金融機関に対し、担保・保証に過度に依存することなく、取引先企業の事業の内容や成長可能性などを適切に評価(=事業性評価)する」ことを求めている。すなわち、「金融機関が事業性評価を通じて、企業に有益なアドバイスとファイナンスを行い、顧客の企業価値向上を実現」することを通じて「経済の発展や従業員の賃金上昇による生活の安定」ひいては「金融機関自らの経営の持続性・安定性にも寄与する」ことを目指すものである。

理想的なストーリーであるが、「言うは易く行うは難し」であろう。これまで、決算書や担保、経営者保証をよりどころに融資の可否を決めてきたのを、将来の事業の収益性に基づいて判断するわけだから、審査手法や考え方のドラスティックな転換が求められているといえる。

事業性評価の第1歩は、融資先を「よく知る」ことであるが、中小企業にとって最大の課題の一つである販路開拓において、金融機関がどのような支援ができるかを念頭に置きつつ、融資先の事業を理解することが重要であろう。人的・資金的なリソースが限定的な多くの中小企業にとって、市場開拓やマーケティングは決してやさしくない。金融機関がそのネットワークを最大限に活用して、ターゲット市場や見込み顧客への足掛かりをつくってあげることが、中小企業にとっての大きな支援となる。

一方で、中小企業にも発想の転換が必要だ。特に自社の製品やサービスに自信がある企業の中には、プロダクトアウトの考え方にとらわれすぎ、市場ニーズをくみ取れずに苦戦している企業もあろう。頭を切り替え、マーケットインの発想を取り入れることが、時に劇的な変化を生み出す。

東京の下町で伝統工芸品を作っている従業員10人足らずのある企業は、当初百貨店向けに加工賃をもらって委託販売をしていた。しかし、社長が製造に専念し、製造に関わらない家族が営業に特化する体制に変えることにより、人的ネットワークが拡がり、顧客ニーズに合った商品を市場に送り出せるようになった。最近では、海外にも同社商品の愛好家を抱え、主力商品をベースにした他業種との様々なコラボ商品も生産・販売するようになった。もちろん、技術力・デザイン力の高さが同社の最大の強みであるが、マーケットインの発想がなければ、どんなにいいものを作っても売ることはできない、という極めて当たり前の考えを実践したわけである。

中小企業のマーケットインを支援する方法は少なくない。ビジネスマッチングなどは代表的であるが、物流インフラとしての地域商社や、国内外へ販売するための電子商取引プラットフォームの設立なども、中小企業の販路開拓の支援となりえよう。どんな中小企業にも強みはある。事業性評価では、まず強みを見つけ、その強みを生かした商品の、市場への橋渡しを意識することが肝要ではないだろうか。

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