人生息抜きが大事-「逃げ恥」からの連想-

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2017年02月07日

  • 中里 幸聖

テレビの話題という時間感覚では少し古い話にはなるが、『CDTVスペシャル!年越しプレミアライブ2016⇒2017』(TBS系列)で、星野源さんが今年の目標として「無理しない」と掲げていた。「今年歌ったうたTOP20」第一位が星野源『恋』であったことを受けて登場した際、書き初めとして披露した。彼自身が昨年後半に過労で体調不良となったことを踏まえて掲げた目標であろうが、今の日本人の少なくない人々が同じ目標を検討して良いのではないだろうか。職場でも学校でも目の前のことにとらわれ過ぎていないか。

週休二日制の普及、祝日の増加などもあり、昭和の頃に比べれば日本人の労働時間は減少している。日本が経済大国であるという認識が広まり始めた1980年代の一人平均年間総実労働時間数は2,100時間前後であったが、2010年代は1,800時間を切るようになっている(※1)。しかし、過労自殺や過労死が度々報道されており、平均的な姿とは裏腹に一部の人間が過酷な労働環境に置かれていることは事実であろう。労働基準局などによる監視も強化されているものの、過労が生じるような職場に勤める人々の認識を根本的に改めなければ、悲劇は繰り返されてしまう。

星野源『恋』は、昨年後半にヒットしたTBS系列のドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(略称「逃げ恥」)のエンディング曲でもある。「逃げ恥」については、既に多くの人が様々に語っているが、タイトルそのものが秀逸である。

また『究極超人あ~る』(ゆうきまさみ作)というマンガに以下のようなやり取りがある(※2)。鳥坂先輩「怒るな曲垣。人生には息抜きというものが必要だぞ。」曲垣「あんたたちは、息抜きのあいまに人生やってるんだろう!!」鳥坂先輩「うまいことをいう。」── 過労死や過労自殺に至る人は、生真面目な人が多いと言われているが、鳥坂先輩のような心持ちをして、ある程度バランスを取っても良いのではないだろうか。生真面目は日本人の美徳だが、もう少し大雑把に考える時も必要と思う。死んでは元も子もない。周囲の人も大きなダメージを負う。生きてこそ!元気を取り戻すには、時には休みも大事である。

ちなみに私自身は生真面目だと自己認識しているが、さて?

(※1)厚生労働省「毎月勤労統計調査」の「事業所規模30人以上」の「調査産業計」の年平均月間値を12倍した値。一人平均年間総実労働時間数の減少は、パートタイム労働者の比率が上昇している事も影響していると推測され、労働時間は長短二極化の傾向があるとも指摘されている。
(※2)『週刊少年サンデー』(小学館)にて、1985年~1987年に連載。現状では小学館文庫(全5巻)が入手可能である。本文中のやり取りは、文庫版3巻15~16頁。

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