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上昇の兆しが見える家庭の電気料金と政府の抑制策

2017年01月26日

大澤 秀一

家庭が電力契約を大手電力会社から新電力へ変更(スイッチング)する動きが着実に進んでいる。毎月およそ20万件がコンスタントにスイッチングしており、2016年12月31日で累計約257万件(※1)、契約口数に占める割合は約4%にまで上昇した。

スイッチングする目的は様々だが、やはり電気料金の抑制が一番に挙げられるだろう。大手電力会社と新電力のそれぞれの月ごとの電力量単価(円/kWh、全国平均)を比較すると、家庭への小売自由化が始まった2016年4月だけは大手電力会社の方が割安だったが、5月以降は新電力の方が2%~7%程度、割安で推移している(図、折れ線グラフ)。

新電力の一口当たりの販売(使用)電力量は大手電力会社のそれよりも5割~6割程度、上回る(図、棒グラフ)。電力量単価が安ければ電気をたくさん使うほどお得感が出るため、使用電力量の大きな家庭が新電力へスイッチングしている様子がうかがえる。

気になるのは大手電力会社と新電力の双方の電力量単価が10月に上昇に転じて、先行きも値上げが見込まれることである。発電電力量の約85%(※2)を占める火力発電の燃料費が値上がりしていることが大きな要因である。今後、OPECおよび非OPECの減産合意が実施されれば下値は支えられる見通しだが、米国のトランプ政権が計画しているシェールオイルの増産が進めば上値は重たくなることも想定される。

燃料費の影響を避けるためには再生可能エネルギーの活用が有効だ。しかし、コスト高の再エネを普及させるための制度による、再生可能エネルギー発電促進賦課金単価(2.25円/kWh、2016年5月~2017年4月)が2017年5月から引き上げられる見込みなので、これも電気料金の上昇につながる。

こうした状況の下、政府はこれまで以上に電気事業者間の競争を促して、電気料金の抑制を図る意向だ。経済産業省は2016年9月末に、総合エネルギー調査会 基本分科会内に「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」を設置し、年末に中間取りまとめを行った。貫徹とは勇ましい言葉だが、2017年度から5年程度かけて新しい制度を複数導入し、東日本大震災と原発事故を契機に始まった電力システム改革を最後まで貫き通す意向だ。

電気料金の抑制につながる新しい制度としては、ベースロード電源市場の創設(2019年度取引開始予定)や連系線利用ルールの見直し(2018年度導入予定)などがある。ベースロード電源市場は、新電力にも大手電力会社が保有する石炭火力や大型水力、原子力等の安価なベースロード電源へのアクセスを可能にする市場である。新電力がLNG火力などのミドル電源で代替しているベースロード不足分をベースロード電源市場から調達できるようになれば、電力量単価の抑制につながるだろう。

連系線利用ルールの見直しは、現行の先着優先(先に利用登録した発電事業者や小売電気事業者の利用順位が優先されるもの)から市場原理に基づくオークション方式に移行することである。スポット市場でより安価な電源が広域で有効活用されるようになれば、卸電力市場の活性化と電源設備の有効活用にもなると考えられる。

こうした新しい制度の導入には、経済効率性だけでなく、安定供給や環境への適合を同時に図ることが必要だ。各制度が全体として整合を保てるように、今後、詳細な規則や実施規模、導入時期などについて検討が加えられることになっている。

電力自由化による電気料金の抑制と選択肢の拡大に対する国民の関心は高い。電力システム改革の取り組みを停滞させずに貫徹し、その成果を確実に国民に還元するための政府の手腕が問われている。

図

(※1)電力広域的運営推進機関「スイッチング支援システムの利用状況について(12月31日時点)」2017年1月13日
(※2)電気事業連合会「電事連会長 定例会見要旨」2016年5月20日

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