曲がり角にきた「爆買い」
2016年09月05日
2015年の訪日外国人は前年比47.1%増の1,974万人(日本政府観光局)と、政府が2020年の目標としていた年間2,000万人を5年前倒しでほぼ達成した。こうした状況に鑑み、政府は新たに2020年までに年間4,000万人、2030年までに同6,000万人の訪日外国人の誘致を目指すなど、高い目標を掲げている(明日の日本を支える観光ビジョン構想会議)。
急増する訪日外国人による消費が一時期「爆買い」と称され、閉塞感漂う日本経済の数少ない成長分野として注目されたことは記憶に新しい。しかし、右肩上がりで伸びてきた訪日外国人の消費は、足下で曲がり角に差し掛かっている。2016年4-6月期GDP一次速報によると、訪日外国人の消費を示す非居住者家計の国内での直接購入は前期比▲4.7%(名目)と、3年半ぶりに減少したのである。訪日外国人数は増加基調にあるものの、消費単価が低下していることが背景にある。
原因として挙げられるのが、①円高、②中国の輸入関税の引き上げ、③訪日外国人の裾野拡大による消費単価の低下、である。しかし、①や②については、日本が独自に対策を講じることは難しい。また、中間層も日本に旅行するようになってくる以上、③についても避けることは困難だ。そうではあるが、せっかくの数少ない成長分野をこのままで放っておくのはもったいない。どうにかならないものだろうか。
一案として考えられるのが、「モノ」に対する消費から「サービス」に対する消費へと、訪日外国人の消費の軸足を転換させることである。従来、訪日外国人の消費の中心は、日本の家電製品や化粧品など「モノ」に対するものであった。「モノ」への消費は景気の変動や製品の競争力に左右されやすいという弱点がある。しかし、日本に来なければ受けられない娯楽や観光などの「サービス」であれば、より安定した日本経済の成長源となり得る。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックは訪日外国人数を増加させるには絶好の機会である。世界中から日本が注目され、観光目的の外国人が増加するのはほぼ確実だ。日本政府には日本の魅力をアピールして引き続き訪日外国人の誘致を目指すと同時に、観光資源等もPRし、安定した収益源となり得る訪日外国人によるサービス消費の拡大につなげてもらいたい。
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