2016年08月10日
イギリスのEU離脱を巡る国民投票や日本の参議院選などが終わり、今年の残る政治イベントは11月の米国大統領選挙になろう。7月には共和、民主両党の党大会で本選に臨む各候補者が正式に選ばれたが、トランプ候補、クリントン候補ともに必ずしも世間から好ましい人物とは思われておらず、予想のつかない戦いになるとみられる。
過熱する選挙戦によってレームダック化が一段と進んでいる現職のオバマ大統領だが、8年前は黒人初の大統領誕生ということで高い高揚感の中にあった。しかも、前任者(ブッシュ前大統領)の人気のなさ・景気が悪いどん底の時期に引き継いだこともあり、一朝一夕に景気やイラク・アフガニスタン問題等が好転するわけでもなく、世論はある程度当初のもたつきを許容した。
しかし、オバマ大統領自身は2012年に再選を果たしたものの、2010年の中間選挙以降、与党・民主党は連敗を重ねて、現在、上下両院は共和党が過半数を握っている。従って、オバマ大統領の8年間のうち、彼自身がやりたかったことができたのは最初の2年間だけだったのかもしれない。
では、どうしてオバマ大統領は就任2年目で支持率が50%を下回り、不人気になってしまったのか。様々な要因が考えられるが、やはり国民世論を二分した医療保険改革、いわゆるオバマケア(2010年3月成立)を強引に推進したことが大きいだろう。今となってはオバマ大統領の数少ないレガシーといえようが、医療保険改革という性格上、大統領になって間もない時期に、しかも景気もどん底から脱したばかりの状況下で無理に成立を急ぐ喫緊の課題ではなかったはずだ。だが、2008年の議会選挙で民主党が勝利し、さらに上院において共和党のフィリバスター(議事妨害)を無効にできる60議席を占めたことで、オバマ大統領が、今が公約実現のチャンス!と前のめりになってしまった可能性がある。
一方、日本の安倍首相は、評判の悪かった前政権の後を引き継いだ点ではオバマ大統領と共通していたものの、オバマ大統領とは対照的に、政権を取り戻した2012年末の衆議院選から先日の参議院選まで、国政選挙で4連勝と着実に勢力基盤を固めている。そして、今回の選挙によって、衆議院に続いて参議院でも憲法改正を発議できる2/3以上の勢力を得たといわれている。
ただ、IMFが“経済成長、リフレ及び財政健全化に関する野心的な目標を達成するためには、包括的で連携のとれた政策の改善が今必要である”、“生産性、労働供給及び潜在成長力を高めることを目的とする構造改革がアベノミクスの再充填に不可欠な要素である”などと指摘するように(※1)、必ずしも国民が期待するほどの好循環は生み出されていない。また、IMFの成長率見通しは2016年0.3%、2017年0.1%(新たな経済対策の効果を含まず)と、アベノミクスの掲げる目標を大きく下回っている。レガシー作りのために拙速に事を進めてオバマ大統領の二の舞にならないよう、慎重な政策判断が求められる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

- 執筆者紹介
-
政策調査部
政策調査部長 近藤 智也
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
紛争の激化がサステナブルファイナンスに与える影響
脱炭素への取り組み、防衛産業の取り扱い、人権保護等の観点から
2026年04月13日
-
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
-
企業のAI導入・利用に必要な人権の視点
世界で進展するAI規制の展開と日本の現状を踏まえて
2026年04月10日
-
遺言のデジタル化に向けた検討
「民法(遺言関係)等の改正に関する要綱案」における、遺言の手続きの見直しについて
2026年04月10日
-
AIの評価軸は“賢さ”から“協働”へ
2026年04月13日

