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2016年は「イランの年」になるか

2016年03月28日

国際的にイランに対する関心が高まっている。2015年7月に欧米など関係6カ国との間で核協議が最終合意され、その後2016年1月には国連安保理決議に基づき経済制裁が解除されたことで、本格的にイランが国際市場へと復帰しつつあるからだ。

イランは人口約7,800万人とトルコとほぼ同じ人口を抱える中東の大国である。長年の経済制裁によりインフレが進み経済は疲弊しているが、広大な国土に石油や天然ガスなど豊富な天然資源を持ち、年間の新車販売も100万台の規模であることから有望な市場として注目されている。今回、金融制裁が解除されたことでイランとの貿易や投資が可能となったため、欧州や日本企業による原油取引やイラン市場への参入が進むとみられている。

実際、イランのロウハニ大統領は1月の制裁解除後に早速欧州を歴訪し、フランスではエアバス機を大量発注した他、イタリア企業との石油や鉄道分野での協力を合意したと伝えられている。先進国経済の先行き不安や中国経済の減速、資源価格下落や金融市場の混乱のなかで、成長の余地が大きいイランに対する期待や関心は相対的に高まっているように感じられる。

さらにイランは経済面だけでなく、政治的にもポジティブな変化が期待できる状況となっている。

2月26日には国民議会と専門家会議選挙が実施された。専門家会議はイスラム法学者で形成され、最高指導者を選出する権限を持つ組織である。現在の最高指導者であるハメネイ師が76歳と高齢であることを考えると、今回の専門家会議(任期8年)はその任期中に次期最高指導者を選出する可能性があり、選挙結果が注目された。結果は議会の一部選挙区では決選投票が予定されているものの、専門家会議、議会ともにロウハニ大統領の政策を支持する穏健、改革派が大きく躍進したと伝えられている。選挙前には強硬な保守派が多くを占める監督者評議会による事前審査で穏健、改革派の立候補者が認められないなどの事態があったが、民意は今回の欧米との核合意を支持しており、経済の回復を最も望んでいるという結果になった。イラン政治に最も大きな影響力を持つ最高指導者のハメネイ師がどの程度の改革を容認するかは不明だが、今後一層のイランの経済的な対外開放が進めば海外からの投資にも弾みがつくものと考えられる。

一方、外交面でのリスクは依然として多い。特にスンニ派アラブ諸国の盟主であるサウジアラビアとは1月に国交が断絶しており、その後も関係改善に至っていない。国交断絶の背景には、イラクやシリア、レバノンでシーア派イランの影響力が増大していることに対するサウジアラビアの警戒感があるとされている。さらにシリア内戦を巡ってはアサド政権を支持するイラン、ロシアと反体制派を支持する米国やトルコ、アラブ諸国との溝は大きい。

イランが今年、経済的にも外交的にも国際的に注目されることは間違いなさそうだが、2016年を「イランの年」とするためには、経済的な対外関係改善だけでなく、特に外交分野において近隣諸国との関係改善や交渉力の発揮が必要となろう。特に、レバノンのヒズボラやイエメンのフーシ派に対する支援など、今までは軍事面での影響力行使が主になっていたが、今後は政治交渉による国際的な貢献を果たすことがイランの本格的な国際社会への復帰には求められている。

今回、議会選挙で穏健、改革派が多数派を占めたことはロウハニ大統領への国民の信認とも言える。対米強硬派が多い監督者評議会との対立は懸念されるが、当面議会運営にとって不安はない。粘り強い交渉によって核合意に至ったロウハニ大統領の指導力、交渉力が期待される。

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