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日本企業にとってCSVはあくまで結果。それでは、目的とは?

2016年03月22日

安井 明彦

私は、昨年、とあるところでの講演でこう申し上げた。「日本企業のCSV(※1)への取組みは、本業を守ろうとする姿勢や生き残りを図ろうとするものが多く、あくまで本業中心の発想である」と。

その時は、GEなど米国の先進取組企業との比較の中で申し上げたのだが、その時の参加者の方々からの反応は、「日本企業には三方よしの発想があり、そんなこと昔からやっていた」といった、ややネガティブな反応が多かった。そんな中、「日本企業でも、CSVに関して、欧米企業に負けず劣らず、戦略的でスケール感を有する迫力ある取組みをしているところがある」とのコメントも頂いた。それ以来、日本企業における、戦略的でスケール感を有する迫力あるCSV取組事例を探し出し分析することが、私に課された宿題となった。

さて、私の宿題は、近日中に「重点テーマレポート」の形で、当社ウェブサイトにて発表したいと考えている。ここではポイントのみを紹介したい。欧米企業と日本企業のCSVへの取組みの違いは様々だが、最も大きいのは、欧米企業にとってCSVは「手段」なのに対し、日本企業にとってそれは「結果」であるように思われることだ。欧米企業は、例えば環境を成長手段としよう(=言葉は悪いが、「環境で儲けよう」)という考えがまずあって、そのためにCSVの枠組みの中で自社資源をうまく活用した戦略体系を考えるという発想であるように思われる。ところが、先進的な日本企業では、中長期的な成長戦略を考えた結果、CSVは避けては通れない内容として、半ば自然に戦略に組み込んでいることが多いのではないか。例えば、ブリヂストンのリトレッド事業や日立の社会インフラ事業は、環境で儲けることから生み出されたのではなく、既存事業が頭打ちの中、どうやって売上の柱を作っていくか、死にもの狂いで中長期の成長戦略を考えた結果、そこにCSV的な要素が「たまたま」含まれることになったという方が正解に近いのではないか。

欧米企業にとってCSVは手段、日本企業にとっては結果。このことには様々な示唆が含まれているように思える。「CSVで儲ける」という発想には、短期的に収益を稼ぐことを重視する志向が反映されているのかもしれない。翻って、日本企業にとってCSVが結果であるなら、その目的とは何か。それは中長期的な成長を実現するために、果敢にリスクを取っていくことではないか。そうして初めて、本業を守ったり生き残りを図ろうとする本業中心の姿勢から脱却し、持続的な成長や中長期的な企業価値向上を実現することに一歩近付くことができるのである。

私は宿題をきっかけに、日本企業の中にも、将来の成長に向けてリスクを取ろうとする姿勢を垣間見ることができた。中長期的な成長実現のために果敢にリスクを取っている日本企業はまだまだあるのか。私はこの研究を今後も継続し、ゆくゆくは日本発のCSVのあり方を提言することができたらと考えている。

(※1)CSV(Creating Shared Value):経済価値と社会価値を同時に追求して実現すること

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