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膨張する米国学資ローン

2015年08月13日

大和総研 顧問 岡野 進

米国の大学の授業料は高い。そしてかなりのペースで上昇が続いている。労働省発表の消費者物価指数によると、1980年の70.8に対して2014年は759.5と10倍以上になっている。リーマン・ショック以降、上昇率は少しマイルドになったものの常に全体の消費者物価指数を上回り続けている。家計にとっての負担感は相当に大きいものになった。

米国の場合、大学の授業料は額面通りではなく、資金力のある一流大学では奨学金でかなり補てんされていることは、3月12日付当コラム「所得再分配を担う米国の大学授業料」で指摘したとおりである。しかし、すべての大学が多額の奨学金を提供できるわけでもなく、高額となった授業料を支払うために学資ローンを利用するケースが多くなっている。FRBの推計(Consumer Credit - G.19)によれば2015年6月末の学資ローン(Student Loan)の残高は1兆2,661億ドルに達した。同じ統計で自動車ローンの残高が9,943億ドルなので、かなりの規模であるし、消費者ローン全体3兆3,823億ドルの3分の1以上を占めている。

学資ローンは借りた学生が卒業後に働いて返すという構図であり、返済が長期にわたる場合が多いと思われる。学生が卒業しても、必ずしも高い賃金への就職が順調にいくわけではないので、返済が滞っていくリスクがある。ニューヨーク連銀の“Household Debt and Credit Report”によれば、2015年第1四半期の学資ローンの延滞率(90日以上)は11.1%であった。2013年第3四半期の11.8%をピークに延滞率の上昇は止まっているが、他のタイプの消費者ローンよりかなり高い水準である。雇用環境は緩やかとはいえ改善してきているわけで、それでも延滞率が上昇してしまうのはもともとローンに無理があるからではないかと思われる。借金してでも大学に行かなければよい職に就けない、そうした事情が無理なローンを借りることにつながっているのかもしれない。

リーマン・ショックの直前の2007年頃のサブプライムローンは残高にして1兆5,000億ドルほど、延滞率(90日以上)は15~20%程度に高まっていたとみられる。現在の学資ローンの状況は、それよりは少し規模は小さく延滞率も低いものの、このままの勢いでさらに残高が増加し、延滞率の上昇が続くと4、5年たった時には2007年当時のサブプライムローンと似た姿になってしまうかもしれない。こうした状況に政策的に手が打たれないと、将来、学資ローン問題を引き金とする金融問題が発生することも否定できないだろう。

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