開幕を迎えたプレミアリーグに感じる日本企業の復活
2015年08月10日
先週、欧州フットボールのイングランドプレミアリーグが開幕した。同リーグは欧州各国の中でも最も激しく、エキサイティングなリーグであるとされており、週末に夜更かししながら試合を見ることは筆者にとって大きな楽しみの一つである。さて、今シーズンのプレミアリーグといえば、大型補強に成功したマンチェスター・ユナイテッドを中心に移籍市場を騒がせていたが、筆者にとっての大きなサプライズは日本企業が胸スポンサーに復活したことである。昨シーズンの王者であるチェルシーは横浜ゴムと契約し、今シーズンからは“YOKOHAMA”の文字がイングランドのピッチを駆け巡ることになった。奇しくも、チェルシーのユニフォームの胸スポンサーは昨シーズンまで韓国企業のサムスン電子が務めており、堅調に企業収益の拡大を続ける日本企業とウォン高に苦しむ韓国企業というマクロ的な構図を象徴するような交代劇であるといえる。
過去のプレミアリーグでの胸スポンサーといえば、真っ先に思い浮かぶのは、長らくマンチェスター・ユナイテッドのスポンサーを務めたシャープであろう。デイビッド・ベッカムなどを擁し、ユナイテッドが黄金時代を迎えた時のスポンサーである。当時は他のチームでも日本企業が胸スポンサーを務めており、日本企業の強さを象徴していた模様だ。
一方、近年は豊富な資金を有する中東企業が多くの欧州チームで胸スポンサーとなっている。特に、エミレーツ航空は、アーセナルやミランといったビッグクラブを中心に、多くのクラブで胸スポンサーを務めている。また、先に出たマンチェスター・ユナイテッドの最大のライバルであるマンチェスター・シティのスポンサーはエティハド航空であり、いずれも中東の航空会社である。さらに、伝統的にユニフォームに企業名が記載されてこなかったバルセロナでさえ、近年は中東系のカタール航空が胸スポンサーを務めている。地の利を活かし、急速な成長を続ける中東の航空会社が欧州フットボール界の胸スポンサーにおける主役となっている。
以上のように、各チームの胸スポンサーはその時代の企業動向の象徴である。今後は、横浜ゴムをはじめとして多くの日本企業が欧州フットボールのピッチで躍動することを期待したい。
(参考資料)
朝日新聞「時代を映す胸スポンサー 欧州の強豪クラブで中東航空会社が代理戦争」、2013年11月17日。
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経済調査部
シニアエコノミスト 久後 翔太郎