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「投資」と「寄付」。根っこは実は同じ?

2015年07月23日

河口 真理子

通常投資とは自分のための資産を増やすために行うもの、寄付は社会のために自分の資産の一部を犠牲にするもの。極端に言えば真逆の行為とみなされがちである。しかし最近、NPOへの支援活動などを社会投資、ソーシャルファイナンスと称することも増えている。先日も「ソーシャルビジネスと社会的投資の最前線」というテーマのパネル討論にモデレーターとして参加した。登壇したのはNPOのファンドレイジングの専門家、途上国でのマイクロファイナンスの事業者、CSRに取り組む企業経営者だった。いずれも通常の「投資」とは縁遠いイメージの登壇者だったので、寄付と投資を結びつける新たなフレームを考えてみた。

米国の子ども向け金融教育「ハッピー・マネー®(※1)4分法」ではお金の使い方を「消費」「貯める」「投資する」「寄付」の4つに分ける。このうち、消費を除いた3つは1つのカテゴリーで括ることができるのだ。ここで、通常預金と投資は自分のための運用という共通点があるが、寄付は全く違うジャンルと思われがちだ。しかし、この3つには1つの大きな共通点がある。それはいずれも世の中で必要とされる事業や活動にお金を融通するのが役割ということである。ここで異なるのは融通の仕方と、事業やプロジェクトに融通した後のリターンの内容である。

まず、融通の仕方はどのように違うのか。預金の場合は預け先の銀行が融資先を選ぶ。これに対して、投資と寄付はいずれも自分が対象の事業や団体を選ぶという点で共通点がある。自分が選ぶということは、事業や活動の「良さ」を評価しているということになる。異なるのは、「良さ」の判断基準である。通常投資の場合は、業績や将来性の良さであり、寄付の場合はその活動の社会的な良さである。

このように「良さ」の判断基準が違うのは、期待するリターンが違うからである。通常、投資は自分への金銭的リターンを期待するものである。この際、その事業の社会的な価値についてはあまり考慮しない。これに対して寄付の場合は、通常団体が社会に良いことをするという、社会的リターンを期待するが、自分への金銭的リターンは期待しない。このように考えると、極端に言えば従来の投資とは、金銭的リターン:社会的リターン=100:0を期待する金融であり、寄付は金銭的リターン:社会的リターン=0:100を期待する金融ともいえよう。

しかし、最近の状況をみてみると、営利企業であっても本業を通じて環境保護や人権配慮などの社会的な課題の解決を図るCSRに熱心な企業は増えているし、NPO団体でも財源を寄付に頼るだけでなく事業収益にも頼る団体も少なくない。また、企業とNPOのハイブリッド型ともいう社会的企業、ソーシャルビジネスも増えてきている。冒頭のパネル討論もソーシャルビジネスの表彰式で行われたものだ。

つまり営利企業も公益目的のNPOも、金銭的リターンと社会的リターン両方を追求するようになっており、その事業体の性格からその比率が異なるに過ぎないともいえないか。例えばCSRに熱心な営利企業であれば金銭的リターンと社会的リターンの比率が80:20、社会企業は50:50、NPOは10:90といった具合である。つまり、寄付も投資も「社会的投資」という共通のフレームで議論することも自然にできる環境ができ始めたといえる。

それは、金銭的リターンの追求と同時に事業の社会的価値を問う投資家や、NPOの社会的価値を評価しつつも活動の生産性や効率性も要求する寄付者を増やすことにもつながろう。つまり投資と寄付の垣根が低くなり、社会のためにリスクを取りながら自分のお金を有効活用してもらうという、本来の社会と個人のための金融が見えてくると期待したい。

(※1)ハッピー・マネー®はI-Oウェルス・アドバイザーズ株式会社の登録商標。

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