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「2年で2%」を取り下げようと吹く北風

2015年03月30日

金融調査部 主任研究員 長内 智

桜の開花が始まり、日本の気候はすっかり春めいてきた。太陽の日差しも暖かくなり、通勤客は冬のコートを脱いで春仕様の服装に衣替えをしている。こうした春の陽気の下で、日本銀行の「量的・質的金融緩和」は、今週末に導入から丸2年を迎えることになる。

日本銀行が2013年4月4日に「量的・質的金融緩和」を導入した際、「消費者物価の前年比上昇率2%の『物価安定の目標』を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」としたことから、その成果を評価する上で「2年で2%」が重要なキーワードとなってきた。その後、「2年」という期間については徐々に表現が後退しており、現在の達成時期は、「2015年度を中心とする期間(=大まかに2年)」とされている。

最近の消費者物価は、2014年夏場以降の原油価格の急落を背景に前年比上昇率が低下傾向にあり、消費税率引き上げの影響を除くベースで見ると、前年比ゼロ%がすぐ目の前に迫っている。原油価格の急落という外生的ショックによる想定外の物価下落であることに留意する必要があるものの、このままでいくと、消費者物価上昇率は「量的・質的金融緩和」を導入してから2年程度でマイナス圏に転落する公算である。

先行きについては、消費者物価の押し下げ要因になっている原油価格が底を打って大きく上昇することになれば、2015年度末頃の「物価安定の目標」の達成もあり得る。しかし、足下の原油の需給動向等を踏まえると、原油価格の急騰は想定しづらく、「物価安定の目標」の期限内での達成は極めて困難な状況にある。こうした中、日本銀行の黒田総裁は、原油価格の動向次第で目標の達成時期が多少前後するとの認識を示している。

他方、市場関係者の間では、日本銀行が「2年」の旗を降ろして「中長期的」なインフレ目標に転換すべきとの声が日増しに強まっている。これは、イソップ寓話の「北風と太陽」を引き合いに出せば、日本銀行の掲げる「2年で2%」を取り下げようと、「北風」が強く風を吹いている状況だと言えよう。しかし、この物語の教訓を思い出すと分かるように、風が強く吹いただけでは、日本銀行が「2年で2%」を撤回することはないと考えられる。

このため、今後のポイントは、日本銀行が自ら「2年」の旗を降ろさざるを得ない時期である。現在、「物価安定の目標」の達成時期は2015年度を中心とする期間であり、原油価格の動向次第では多少の後ずれも許容される。すると、今春に「2年」の修正を行う必然性は感じられず、多少の表現変更を行えば、2015年度の前半は「2年」を維持することが可能であろう。いずれにせよ、「2年で2%」の変更のために求められているのは、北風よりも太陽なのかもしれない。

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