銀行を覆う二つの懸案事項:「銀行勘定の金利リスク」と「GLAC」
2014年05月21日
全国銀行協会の会長は、2014年4月1日に行われた記者会見(※1)にて、2014年における銀行の健全性規制の議論に関して、二つの重要なトピックに言及している。それは、表題にあるとおり、「銀行勘定の金利リスク」と「GLAC」(Gone-concern Loss Absorbing Capacity)である。
「銀行勘定の金利リスク」の例としては、銀行勘定で保有する国債の金利リスクが挙げられる。現在、わが国では、このリスクは資本賦課の対象ではなく、金利リスク量が自己資本の20%を超える場合に監督当局による早期警戒の対象となるに留まる(いわゆるアウトライヤー規制)。
オリジナルのバーゼル規制であるバーゼルⅠでは、当初は、金利リスク自体が資本賦課の対象となっていなかった。
しかし、バーゼル銀行監督委員会(バーゼル委)は、1996年に、トレーディング勘定の金利リスクを資本賦課の対象としている。
そして、バーゼル委は、今度は銀行勘定の金利リスクを資本賦課の対象とすべきではないかという検討をしている。この検討の背景には、トレーディング勘定と銀行勘定の境界の見直しの議論がある。
仮に銀行勘定の金利リスクが資本賦課の対象となった場合、銀行は、国債の保有に対するスタンスの変更を迫られる可能性がある。
また、GLACは、金融安定理事会(FSB)が2013年9月のG20にて報告し、承認された概念である。
これは、G-SIFIs(グローバルなシステム上重要な金融機関)の破たん処理の際の損失吸収力の充実性についての議論である。
FSBは、GLACの定義やその最低必要額について、2014年11月に開催されるG20にて報告する予定である。
先行するEUや英国の類似の議論を参照する限り、GLACには、普通株やベイルイン債務が含まれるものと思われる。
仮に、「ベイルイン債務」の範囲を、バーゼル規制上の負債性AT1(その他Tier1)及びTier2とした場合、G-SIFIsについては、バーゼル規制上の自己資本の最低所要水準に加えて、バーゼルⅢ適格の新型劣後債を含むGLACにも最低必要額が設けられるという議論になろう。
もし、「ベイルイン債務」の範囲が、バーゼル規制の資本に算入されないシニア債にまで及ぶとすれば、わが国では、(憲法で保障されている)投資家の財産権との整合性が問題となりうる。
このように、いずれのトピックも、わが国の銀行業界にとってはセンシティブな問題を孕んでいそうである。
(※1)全国銀行協会ウェブサイト参照
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ニューヨークリサーチセンター
主任研究員(NY駐在) 鈴木 利光
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