消費税率引き上げ時の価格転嫁を見極める「換算表」
2013年09月30日
明日、10月1日に発表される日銀短観の内容を見て、安倍首相は、来年4月の消費税率5%から8%への引き上げの最終判断をするとされる(以下、消費税率が来年4月から8%に引き上げられることを前提に述べる)。
また、同じく明日、10月1日から、消費税転嫁対策特別措置法が施行され、商品やサービスの価格に「税抜き価格のみ」の表示(例:2,980円+税)と「税込み価格のみ」の表示(税込み2,980円)が混在することになる。
現在(2013年9月30日まで)は、消費者に商品やサービスを販売する事業者は、原則として消費税を含めた税込み価格を表示することが義務付けられている。税込み価格と税抜き価格を併記することも認められているが、税抜き価格のみの表示は認められていない。
しかし、消費税率が引き上げられると、事業者は新しい税率をもとに、税込み価格を書き換える必要がある。その際、事業者が全ての商品の値札を一斉に書き換えるのは困難である。そこで、2013年10月1日から2017年3月31日までは、消費税転嫁対策特別措置法により、表示価格が税込み価格であると誤認されないための措置を講じるなどの条件を満たせば、事業者は「税抜き価格のみ」の表示をしてもよいとする特例が設けられる。
このため、2013年10月1日から2017年3月31日までは、税抜き価格と税込み価格が混在することとなる。
税込み価格と税抜き価格が併記されていれば問題はないが、同じ商品について「税抜き価格のみ」しか表示されていない店舗と、「税込み価格のみ」しか表示していない店舗とがあると、どの店舗の価格がより安いのか、消費者にとってはわかりにくい。
例えば広告を見ながら価格を比較する際、A店舗は「2,800円+税」として「税抜き価格のみ」で表示し、B店舗が「税込み2,980円」と税込み価格のみで表示している場合、どちらが安いのかを消費者が瞬時に判断することは困難である。
そこで、全ての商品の価格について「税抜き」と「税込み」価格について換算するのは難しいかもしれないが、98円や2,980円など商品の価格としてよく使われる価格について、「税込み」と「税抜き」価格の換算表を下に示した。これを携帯(スマートフォンに画像として保存するなど)しておくと、買い物の際に便利かもしれない。
この表を見ると「税込み2,980円」というのは、税率5%であれば税抜き2,839円(図表1の①欄)、税率8%であれば税抜き2,760円(図表2の③欄)ということがわかる。したがって、先の例で消費税率5%であれば「2,800円+税」のA店舗の方が安く、消費税率8%であれば「税込み2,980円」のB店舗の方が安いということになる。
また、この表は、消費税率引き上げに際して、店舗が税抜き価格をどう変更したかを見極める際にも用いることができる。図表1を見ると、消費税率5%の下で「税込み2,980円」で販売されている商品が、消費税率8%への引き上げ後、「税抜き2,839円」(図表1の①欄)または「税込み3,066円」(図表1の②欄)であれば、その店舗はちょうど消費税率引き上げ分を消費者に転嫁していることになる。それより高ければ実質値上げを行っており、それより安ければ実質値下げを行っていることになる。
果たして、消費税率引き上げ分は商品価格として消費者に転嫁されるのだろうか? 筆者は、買い物の際に、換算表をもとに検証しようと考えている。



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- 執筆者紹介
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金融調査部
主任研究員 是枝 俊悟
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