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猛暑の中国で電力制限が実施されなかったのはなぜか?

2013年09月24日

新田 尭之

今年の夏、日本は太平洋高気圧とチベット高気圧の影響で猛暑と豪雨が幾度となく繰り返されてきた。気象庁によると、今年の6月から8月にかけて日本の平均気温は平年を1.06度上回り、1898年の観測開始以来4番目に高かった。また8月12日に高知県の四万十市では最高気温が観測史上最高となる41.0度に達したことも記憶に新しい。これに加えて、民間気象会社であるウェザーニューズによれば、突発的かつ局地的に大雨が降る“ゲリラ雷雨”(いわゆるゲリラ豪雨)が発生した回数は7月23日から8月15日までの期間、全国では前年同期比2.7倍、東京では同6.4倍まで増加している。

これらの高気圧は日本だけではなく、中国の東部沿海部にも記録的な猛暑をもたらした。地下鉄駅構内の床や家具量販店の展示用のソファーやベッド等でくつろいでいる人々の姿や、氷の上でぐったりしているパンダの姿は日本でもテレビ等を通じて報道され、話題となった。

加えて、猛暑にもかかわらず、中国各地で電力制限が実施されなかったことも注目された。2011年には猛暑の影響で水力発電が落ち込んだ結果、広範な地域で電力制限が行われたこともあり、一部の間では今夏に電力制限が行われなかった理由は工業部門が生産鈍化に伴って電力消費を減少させたことではないかと懸念された。仮に工業部門の電力消費が鈍化していれば、7、8月に鉱工業生産が大きく加速(6月:前年同月比+8.9%⇒7月:同+9.7%⇒8月:同+10.4%、出所は国家統計局)したことの信憑性が大きく損なわれてしまう。しかし中国電力企業連合会によれば、工業部門による電力消費量の伸びは6月には同+5.7%、7月は同+8.1%、8月に至っては同+12.1%となり、鉱工業生産と同様に大きく加速している。したがって、中国で今夏電力制限が行われなかった理由は、電力消費が減少したことではなく、2011年の場合と違って発電量が電力消費を上回り続けられたことだと考えられる。

これを裏付ける材料として、火力発電の急増が挙げられる。国家統計局によれば、発電量全体の約15%を占める水力発電は猛暑の影響で低迷(6月:前年同月比+5.7%⇒7月:同▲6.5%⇒8月:同▲10.1%)した一方で、発電量全体の約80%を占める火力発電は高い伸び(6月:同+4.9%⇒7月:同+11.3%⇒8月:同+19.2%)となっている。火力発電が大きく増加した主な要因としては、①火力発電の設備が2013年1-8月累計で前年同期比+6.4%増加したこと、②燃料である石炭価格が下落したこと、が挙げられる。②に関して、国家発展改革委員会価格観測センターによる全国36都市を対象とした調査では、コークス用石炭の取引価格(平均値)は2011年6月の1,117.5元/トンをピークにして、その後は下落傾向となり、2013年7月および8月はともにピーク時から15.1%低い948.3元/トンとなっている。

猛暑にもかかわらず、今夏中国で電力制限の実施が回避されたことは幸いであった。しかしこれは石炭価格が下落し続けてきた結果でもあった。今後も中国政府が電力価格の抑制を続ければ、猛暑と石炭価格の高騰が重なった際、水力発電は水不足の影響、火力発電はコスト割れの影響を受け、電力会社は電力需要を満たすほど十分に発電できなくなる。したがって、中国政府は低すぎる電力価格の適正化を検討すべきだろう。

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