知っていますか? 民法

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2013年09月18日

「民法を知っていますか?」と問いかけた場合、どんな答えが返ってくるのだろう。想像するに、「知らない。」、「名前は聞いたことがあるけどよく知らない。」、「大学が法学部だったので学んだけど、詳細は忘れた。」という答えが多く返ってくるのだろう。しかし、だからといって民法という法律が国民生活と関わりが薄いというわけではない。

最近のニュースの中にも、民法と関わりがあるものが存在する。例えば、9月4日に出た最高裁判所の違憲判断がある。これは、遺産相続において、結婚していない男女の間に生まれた非嫡出子(婚外子)の法定相続分を、結婚している男女の間に生まれた嫡出子の半分と定めた民法の規定が憲法に違反するとした判断である。新聞などでも大きく取り上げられたので、記憶に残っている方もいるだろう。民法は相続などについても規定をおいている。今回その一部が憲法違反と判断されたのである。

また、7月には地方裁判所の判決だが、自転車による交通事故を起こした子(事故当時、小学5年生)の親に、監督不十分として9,500万円の損害賠償責任を命じた判決もあった。自転車事故でもこれほどの損害賠償になる可能性があると改めて思い知らされたニュースであった。このような事故の損害賠償請求の根拠などを定める規定も、民法の中にある。

このようなことを持ち出されてもそうそう出くわすことではないので、まだまだ民法が遠くに感じたままかもしれない。しかし、民法は基礎的な事項を定めており、本当は国民生活との関わりが思いのほか深い、身近なものである。

例えば、コンビニやスーパーなどにおいて、ほとんどの方はお茶とかパンなどを現金で買った経験があると思うが、この場面でも実は民法が適用され、契約書を作成していなくとも「売買契約」が結ばれた上で契約が履行されたということになっている。また、友達にお金を一時貸すような場合にも、民法が適用され「消費貸借契約」が結ばれたことになっている。このような場合、民法が基礎的なもの過ぎて当事者は民法の「み」の字も意識することもないのだろうが、水面下で民法は働いている。もしトラブルになった場合(例えば後者の場合であれば、貸したお金を返してくれないので返せと訴訟を起こす場合)などには、民法はその姿を現すことになるのかもしれない。

国民生活と関係があるのに、身近に感じてもらえない民法に改正の動きがある。ひとつは、先ほどの9月4日の違憲判断に伴う改正論議である。最高裁判所で憲法違反とされたので、非嫡出子(婚外子)の法定相続分に関する議論が急展開するであろう。

もうひとつが、契約に関する部分の改正論議である。4年ほど前から法務省の法制審議会の民法(債権関係)部会というところで議論されている。民法の債権関係部分の改正論議とか、債権法の改正論議などと表現されることもある。今年2月にはその民法(債権関係)部会は「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」(※1)(※2)なるものを決定している。この決定によって具体的に改正内容が決まったわけではないが、議論もしくは改正に向けた作業が進んでいることを示すものといえる。

このような民法の改正論議があるのだが、しかしというべきか、やはりというべきか、国民一般の関心は薄いように思われる。民法は、基礎的な法律であるとともに身近な法律であるので、もっと関心を持ってもらえるようになってしかるべきであろう。影の薄い民法ではあるが、実は国民生活とも関係が深いものなので、皆さんに少しでも関心を持っていただきたい。例えば、新聞などで民法改正に関する話題が取り上げられた場合には、自分にも関係があるかもしれないと思って目を通してみるだけでもしてほしい。

(※1)法務省の「民法(債権関係)の改正に関する中間試案(平成25年2月26日決定)」ウェブサイト参照。
(※2)「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」以前の動向については、以下のレポート参照。
鳥毛拓馬「なぜ債権法は改正されるのか」(『大和総研調査季報』 2013年新春号(Vol.9)掲載)

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