アベノミクスの行方を占う選挙に関する雑感
2013年07月10日
2012年12月の寒い中の第46回衆議院選挙から7ヶ月しか経っていないが、今度は暑い最中に第23回参議院選挙の投票日があと10日余りに迫っている。
総務省の発表によると、14日前の段階で期日前投票をした人は約103万人にのぼり、前回2010年の参議院選挙の同じ時期に比べて31%も増えているという。一方で、投票率が低くなるのではないかという懸念が公示前から強い。昨年の衆議院選挙の投票率が戦後最低に落ち込んだ他、6月下旬、参議院選挙の前哨戦とされた東京都議会議員選挙の投票率が過去2番目の低さだった点も影響しているとみられる。
これら二つの話は一見すると矛盾しているようだが、前者は実際の数字であるのに対して、後者は可能性を示唆しているにすぎない。ただ、直近4回の、同じ年に実施された都議会選挙と参議院選挙(東京都)の投票率の乖離幅は▲3.2~+1.2%であり、また、平成になってからの参議院選挙の全国と東京都の投票率はほぼ連動しており、東京が平均で2.3%ポイント(直近3回に限ると0.2%ポイント)下回っているだけだ。従って、今回の参議院選挙の得票率も低いかもとの類推は、それなりの根拠があるといえよう。
そもそも、投票率が低いことは目くじらを立てるほどの問題ではないだろうし、投票率が低いとその選挙の有効性が問われてしまうのだろうか。例えば、投票率が50%でA党が全体の50%の得票を得ても、全有権者の4分の1にすぎず、民意全体を反映していないという言い方がある。投票に行かなかった全員がA党以外に投票したと仮定すれば確かにそうだが、それはいささか乱暴な前提であろう。報道されているように、ややワンサイドゲームの様相を呈してくれば、投票に行かなくてもいいかと考える者が現れてもおかしくない。それに、投票しないという選択肢は尊重されるべき判断であると考える。もし何が何でも投票率を上げたいならば、キャラクターやタレント等を使った啓発活動を行うよりも、オーストラリアのように、正当な理由なしに投票しなかった有権者に罰金を科す方が、様々な意味で生産的であろう。
さらに、批判を承知でいえば、一票の格差についてどこまでこだわる必要があるのだろうか。世界の民主主義国家には様々な選挙制度が存在する。例えば、米国の上院は、存在意義を問う論調もみられる日本の参議院と同じ任期6年だが、現在のオバマ大統領がそうであるように、上院議員から大統領を目指すケースが多い。上院議員は各州に2名ずつ割り当てられ、つまり有権者40万人台のワイオミング州と約2,800万人のカリフォルニア州が同じ扱いなのである。また、イタリアの下院では、第1勢力となった政治連合に全630議席のうち340議席が保証されることになっており(340議席以上であればそのまま配分)、2013年の総選挙でも約30%の得票率だった中道左派が340議席を獲得した。ギリシャでも得票率第1位の政党に全300議席のうち50議席を加算するという仕組みがある。これらは、日本における議論とはかけ離れたシステムといえよう。
いずれにせよ、円安と株高を演出してきたアベノミクスに対して、あと10日余りで有権者が一定の判断を下すことになる。
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