イノベーションを生み出す組織とは

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2013年04月01日

  • コーポレート・アドバイザリー部 主任コンサルタント 内山 和紀

ここ最近、『リバース・イノベーション』という言葉を耳にするようになった。

リバース・イノベーションとは、同名の書籍の中でビジャイ・ゴビンダラジャンらが提唱した「新興国で生まれた革新的な製品やサービスを先進国に逆流させる」というものである。(※1)
同書において、軽量かつ安価であることから2台目のパソコンとして人気のあるネットブックは、リバース・イノベーションを具体化した例として示されている。ネットブックの起源は、新興国の児童教育向けに開発された超低コストのノートパソコンである。先進国でもメールとインターネットが利用できる最低限の機能を備えた軽量かつ安価なパソコンは需要があるのでは、といった考えによってネットブックは生まれてヒットした。このようなリバース・イノベーションを生むための方法論やケーススタディが記されている。

国内市場が飽和状態にあり縮小傾向に向かっていく一方で、新興国市場の人口の多さや高い経済成長率は企業にとって魅力的であり、雑誌や新聞等では毎日のように新興国への進出を検討する企業を目にする。
しかし、日本と新興国市場では商慣習や文化、法制度が異なる。企業が進出するための背景は複雑なものだ。そのため、過去の成功体験よりソリューションを導くのではなく、現地にてイノベーションを起こすことが企業成長のキーとなるとビジャイらは述べている。

イノベーションを起こす中心メンバーは、現地に精通している社員となるだろうが、実際にプロジェクトメンバーがイノベーションをリリースするためには、複数回にわたる多忙な経営陣への説明や煩雑な社内承認手続きなどが必要となる。これらはプロジェクトメンバーのモチベーションを下げ、市場に対してイノベーションを起こすための絶好のタイミングを逃してしまう。リリースまでに様々なプロセスを必要とする凝り固まった組織形態は、イノベーションを生み出す際の障壁となりやすいだろう。
新興国へ進出する企業にとって、現状の組織はイノベーションを生み出しやすい組織となっているだろうか。国内市場だけでなくグローバルに目を向けた場合、本社機能は国内ではないかもしれないし、地域子会社に大幅な権限を持たせた方がいいかもしれない。

イノベーションを実現しグローバルな成長を続けるためにも、組織の変化を恐れず、勇気ある決断を行うことが重要である。


(※1)『リバース・イノベーション』ビジャイ・ゴビンダラジャン+クリス・トリンブル著(ダイアモンド社、2012年)

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コーポレート・アドバイザリー部

主任コンサルタント 内山 和紀