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中国政府が新たな不動産価格抑制策を発表

2013年03月11日

経済調査部 エコノミスト 新田 尭之

2013年3月1日、国務院弁公庁は、国五条と呼ばれる不動産価格抑制策を公表した。目的は、都市部を中心に上昇基調にある不動産価格を抑制することである。中国では、リーマン・ショックに対応するために発動された4兆元の景気対策の影響で不動産価格が高騰し、中低所得者層の住宅購入が困難となったことで社会不安が高まった。今回の通知は過去の教訓を踏まえ、不動産価格の高騰を予防することを意図していると考えられる。

この通知で発表された項目のほとんどは2010年から行われてきた一連の不動産価格抑制策を再確認・再徹底するものである。しかし、項目の中で、譲渡所得税を厳格に20%徴収することが明記されたことは注目される。この項目が追加された背景には不動産売却時の徴税に関する問題がある。中国で住宅を売却する際には、原則的にキャピタルゲインの20%の譲渡所得税が売り手に課されるが、例外的に取得価格を証明することができない場合は、売却額の1~3%(多くの地方では1%)を納税することも可能であるとしている(5年以上自己使用し、かつ家庭で唯一の生活用住宅の売却は免税)。住宅価格が高騰している状況では後者の納税方法が有利である。そのため、ほとんどの人が意図的に取得価格を証明せずに後者の納税方法を選択している事態となっている。

今後地方政府が具体策を打ち出すまでに、駆け込み需要の発生によって中古不動産市場が短期的に過熱する可能性がある。譲渡所得税の対象は、法律上は売り手であるが、実際は買い手が売り手の代わりに税金を負担する状態がまかり通っている。そのため買い手は実質的に税金が引き上げられる前に中古不動産を購入する可能性が高い。

地方政府が具体策を打ち出した後に、中古不動産市場が冷え込むかどうかは地方政府が発表する具体策の内容に加え、それをどの程度厳格に実行するかにかかっている。これまで中古不動産を売買する際に厳格に20%の譲渡所得税が適用されていなかった背景の1つには、当局の担当者が取得価格を調査する手間を惜しんだといった事情もあった。仮に、地方政府がこのような状況から脱却し、厳格に具体策を実行した場合、実質的な増税によってコストが増加する中古不動産の販売は低迷すると考えられる。一方で、20%の譲渡所得税と関係のない新築不動産の販売は拡大すると見込まれよう。

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