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アベノミクスに求めたい"熱意"

2013年01月31日

調査本部 執行役員 調査本部副本部長 兼 金融調査部長 保志 泰

安倍内閣の打ち出した政策(アベノミクス)は円安・株高を呼び込み、市場関係者のみならず、企業経営者や消費者に対しても心理的なプラス効果をもたらしている。為替や株価の水準が維持されれば、それだけでも企業収益全体を押し上げる効果を持ち、経営者や消費者心理の改善と相まってポジティブな循環につながる可能性もある。

しかし、足もとの相場変動による環境の好転は、必ずしも持続性があるわけではない。好環境がいつまでも続くと考える経営者や消費者は、おそらく少数派だろう。何しろ、長いことデフレが続いたがゆえに、その心理は容易には暖まらない。だからと言って、公共事業を拡大させ続けることが適当でないことは明らかだ。日本の持続的発展のためには、民間の自律的な活力回復が欠かせず、そのために政府ができることは、民間企業が活動しやすい環境を用意することに他ならない。

安倍内閣は6月にも「民間投資を喚起する成長戦略」を策定するとしている。その内容については現時点では明らかではないが、1月11日に閣議決定された「日本経済再生に向けた緊急経済対策」(以下、対策)から、一部、その断片が読み取れる。対策の文章で使われているキーワードから、アベノミクスが民間活力回復に本気かどうかを探ってみよう。

まず、対策は基本的に短期刺激策であり、「復興」「インフラ」「防災」といった公共事業絡みのワードが多く使われている。文章中(目次等も含めて)に使われている回数を数えると、「復興」(39回)、「インフラ」(28回)、「防災」(36回)という具合だ。また、参院選を控えてか、「地方」(20回)、「地域活性化」(19回)、「中小企業」(24回)、「農業」(14回)などのワードも目立つ。これらの言葉遣いだけみるならば、昔の自民党時代とあまり変わらない、政治色の強い経済対策の匂いを感じる。

一方で、成長戦略のキーワードである「民間投資」は14回使われており、それなりの思いが感じ取れる。そして注目したいのは「イノベーション」(20回)という言葉が多く使われていることだ。イノベーションを創出するのは、当然ながら民間部門に他ならず、それを多用していることは、長期の目線で民間活力回復を心に留めている証と捉えたい。また、その関連でもある「ベンチャー」(7回)、「リスクマネー」(7回)、あるいは報道でも多く取り上げられた「ファンド」(10回)、「官民」(8回)などのワードが散りばめられている。政治レベルで、イノベーション停滞への危機感が共有されているのならば、大いに歓迎である。

もっとも、民間活力回復にとって絶対不可欠な「規制改革」のキーワードは10回にとどまっており、「安倍内閣の1丁目1番地」と言うわりには、あまり前面に押し出されていない印象を受ける。もちろん、予算措置が伴わないものは対策にあまり書き込まれていないことはあるし、対策の中でも「新たな規制改革会議を立ち上げ」として今後取り組む姿勢を打ち出している。しかし、「規制改革」は立ちはだかる障害が多いだけに、政権としての“熱意”が弱ければ、最終的に押しつぶされてしまいかねない。この先発表される成長戦略では、是非とも、その“熱意”を前面に押し出して、“ブレない”アベノミクスを実現してもらいたいところだ。

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保志 泰

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