日本企業の女性管理職の状況

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2012年11月13日

  • 伊藤 正晴

1986年に「男女雇用機会均等法」(※1)が施行され、その後も改正が重ねられるなど、雇用に関する男女の機会均等を図るための法的な整備が進んできた。また、少子高齢化による労働力人口の減少が懸念され、企業における女性の活躍推進が求められている。そこで、厚生労働省「『平成23年度雇用均等基本調査』の概況」から、日本の企業における女性管理職の状況を検討してみた。

下図が、日本企業における係長相当職以上(役員を含む。)の女性管理職の状況を図示したものである。まず、女性管理職を有する企業の割合は、平成21年度の66.7%から平成23年度は69.9%へと上昇している。また、過去からの推移をみると割合はほぼ一貫して上昇していることがわかる。平成23年度について役職別にみると、部長相当職は14.4%、課長相当職は24.4%、係長相当職は34.6%でいずれも平成21年度よりも上昇した。

次に、係長相当職以上(役員を含む。)に占める女性の割合であるが、平成21年度は8.0%であったのが、平成23年度は8.7%へと上昇している。また、平成7年度以降の割合も上昇が続いている。平成23年度を役職別にみると、部長相当職は4.5%、課長相当職は5.5%、係長相当職では11.9%で、いずれも平成21年度よりも上昇した。

このように、日本の企業における女性管理職の割合は上昇しているが、直近でも約3割の企業には女性管理職が存在していない。また、上位の役職ほど女性の占める割合が下がり、部長相当職では20人に1人以下の水準にとどまっている。当調査で女性管理職が少ないあるいは全くいない理由をみると、「現時点では、必要な知識や経験、判断力等を有する女性がいない」としている企業の割合が54.2%と最も高かった。学校教育や社内の人材育成が不十分であることが示唆される。また、「勤続年数が短く、管理職になるまでに退職する」が19.6%となっており、早期の退職が女性活躍の阻害要因となっていることがうかがえる。

さらに、「女性の能力発揮促進のための企業の積極的取組(ポジティブ・アクション)」に「取り組んでいる」企業の割合は31.7%であるが、「今のところ取り組む予定はない」としている企業が51.9%となっている。ポジティブ・アクションに取り組む予定のない企業には、すでに女性が十分に活躍しているとする企業もあるが、企業によって女性の活躍推進への取り組みに大きな差が生じていることが推察できよう。教育や研修、結婚や出産・子育てと仕事の両立など、女性が活躍できる環境についての実効性のある整備を一層進めていくことが必要ではないか。

日本企業における係長相当職以上(役員を含む。)の女性管理職の状況図表1 輸送機械工業の影響を除いた鉱工業生産指数の推移

(注)平成21年度及び平成23年度の[ ]内の数値は岩手県、宮城県及び福島県を除く全国の結果
(出所)厚生労働省「『平成23年度雇用均等基本調査』の概況」より大和総研作成


[参考レポート]
民間事業所における男女別平均給与の動向」(2012年10月12日付ESGニュース)


(※1)1972年に施行された「勤労婦人福祉法」が、1985年に「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律」(通称「男女雇用機会均等法」)として改正され、1986年から施行された。その後、1997年の大幅改正により正式名称は、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」となっている。

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