"強い会社"であり続けるために

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2012年10月17日

  • 安井 明彦
「強い会社」とはどういう会社か?様々な答えが考えられようが、これまでのコンサルティング経験から、「進化・革新し続けるための仕組み・文化を持つ会社」が重要な要素の一つであろうと感じている。

それでは、「進化・革新し続けるための仕組み・文化」とは何か?それは、全社視点での進化・革新に向けた行動を駆り立てるゴールを社内で共有化できていることではないだろうか。例えば、東芝では2008年4月以降、CCC※という指標を用いて、運転資金の効率性の改善活動に取り組んでいる。財務・経理部門の仕事と思われがちなテーマだが、東芝では、「全社のイノベーション活動の一つ」(日経ヴェリタス09.6.14.以下同様)と位置付け、「社内カンパニーやグループ会社ごとにCCCの目標を設定し、評価」する。「営業と調達が協力し合って条件交渉」したり、「資金回収までを営業の仕事」と再定義したりと、キャッシュ創出を全社に徹底させている。トップと現場の距離の近さや、顧客志向のベクトルが全社に貫かれていると感じさせるこうした取組みにより、結果として運転資金の効率性につなげているものと見られる。

ところで、事業の成長に伴い、多くの企業が事業部制や持株会社制等の分権化を志向してきたが、こうした「進化・革新し続けるための仕組み・文化」が分散消失していないかと懸念している。迅速な意思決定のための分権化が、技術の融合やビジネスモデルの組み換え等の昨今の環境変化により、いつの間にかトップと現場の距離が遠くなる非効率なものとなり、短期志向やリスク回避に偏りすぎる傾向を引き起こしてしまっている例も多いのではないか?

分権化とは、各々の事業が各々の組織文化を生み出すことを許容することでもある。分権化を志向する前に、このことが果たして今求められていることなのか、今一度見直してみる価値はあるだろう。既に分権化している組織においても、トップとの距離をより近くし、革新や進化に舵を切る体制にする時期ではないか検証してみる必要があるのではないか?こうした検証に、我々のような第三者の視点を活用するのも一案であろう。大和総研では、これまで述べたような、進化・革新のための仕組み作りのお手伝いもさせていただいている。

組織・仕組み・文化は生ものである。かつては機能していても、制度疲労を起こしているケースも多い。“強い会社”であり続けるためには、不断の見直しができるかどうかにかかっている。

※CCC(キャッシュコンバージョンサイクル:運転資金の効率性を見る指標の一つ。売掛金回転日数(売掛金÷売上高×365日)+在庫回転日数(棚卸資産÷売上高×365日)-買掛金回転日数(買掛金÷売上高×365日))

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