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ニューヨークでの家探しをグローバルに考える

2012年08月01日

政策調査部 主席研究員 土屋 貴裕

私事にて恐縮だが、5月末よりニューヨークへ駐在し、6月は家探しの経験をした。6月上旬のニューヨークは過ごしやすく、快適な気候のなかでの家探しだったが、驚いたことが二つあった。

まずは家賃が高いことだ。水準が高いことは事前に聞いていたものの、数年前に契約した同僚等から聞いた家賃と比べて、ずいぶんと上昇しているな、という印象を受けた。もちろん、同じ物件ではない以上イメージによる部分もあるだろうし、そもそも日本と異なり、一般物価が上昇しているインフレの国であることは踏まえなければならない。

もう一つ驚いたことは、オーナー(大家さん)が必ずしもアメリカ人ではないことだ。物件によっては、家賃を値切ってみたり、条件をつけてみたりと交渉の余地があるのだが、不動産のブローカーから「オーナーに確認してみるが、時差があるので回答に時間がかかる」という返答がしばしばあった。時差から考えると、日本を含むアジアにオーナーがいるらしい。

こうしたニューヨークにおける卑近な例がそのままアメリカ全体にあてはまるとは言えないだろう。だが、アメリカの消費者物価(CPI)に含まれる家賃は上昇を続けており、むしろニューヨークの状況は、アメリカ全体を強調する形で表しているのではないだろうか。


家賃上昇の一因は、アメリカ国内でしばしば指摘される「信用力の格差(credit divide)」が反映されて、住宅購入のためのローンを組めず、賃貸を選択する人々が増えているためだと聞く。また、かつてグリーンスパン元FRB議長が利上げ局面でも金利が上昇しないことを「conundrum(謎)」と呼んだが、その背景はアジア諸国からの資金流入だったとされる。経常収支の黒字国は資本の輸出国でもあり、この場合は米国債を買い支えたということだ。最近、アメリカの住宅価格が上昇に転じつつあるが、アジアに多く存在する経常収支黒字国からアメリカへの資本流入が、不動産市場を支えている要因の一つかもしれない。

日本ではあまり実感しにくいが、物価の上昇は「インフレ税」と呼ばれ、生活水準の低下をもたらし得ることを再確認できたように思う。信用力の格差と経済のグローバル化に伴う海外資金は、海外駐在員を含め、賃貸を選択する人々の生活を圧迫しているのかもしれない。

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政策調査部
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