ミャンマー:やるべきこと、気をつけるべきこと

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2012年07月19日

  • 佐藤 清一郎
ミャンマーの経済発展には、自国の努力はもちろんだが、海外の技術やノウハウの活用が重要である。幸いにして、先進国には成長を可能とする技術やノウハウが豊富にある。後発国としては、Late comer advantageの利益を存分に享受すべきで、そのためには、法制面での整備を行い経済活動における不確実性を払拭していくことが大事である。特に、海外投資家の信頼確保という観点では、明瞭な外国投資法や企業法の制定が急務であろう。こうしたことを行いながら、実際の経済活動で障害となっている電力不足、道路・港湾の不備等への対応が求められる。こうした環境整備の下、農業近代化、人材育成、金融セクター改革、経済特区活用等を行っていくべきである。現在取り組んでいる第5次5ヶ年計画(2011-2015)では、海外と協力しながらインフラ整備、産業育成をしていくとの基本方針が打ち出されている。重点開発分野としては、資源では、石油・ガス、水力発電である。主に、中国、タイ、韓国等との協力で行われているようである。経済インフラや産業育成に関しては、経済特区を利用することとしている。経済特区は、ハイテク、情報通信、輸出振興、港湾・物流等の分野にわけられている。日本は、ティラワ港整備に大規模な援助を表明して、具体的にマスタープランづくりに着手している。日本のミャンマーへの支援の大枠は、2012年4月にテインセイン大統領が来日した際に合意された。合意文書では、ミャンマーの民主化、国民和解、経済改革の果実を国民に行き渡らせるという目標の下、(1)国民の生活向上のための支援、(2)経済・社会を支える人材の能力向上や制度の整備のための支援、(3)持続的経済成長のために必要なインフラや制度の整備に関する支援方針が示された。


一方、成長模索段階で認識すべきは、海外との関係強化は、ノウハウ吸収等を通じて成長促進要因となるが、同時に、資金フロー等の流れを通じて成長阻害要因となる可能性を秘めているということである。この点からすると、(1)海外からの過剰な借入れ(特に短期借入れ)や(2)海外資金の流入規模や速度には十分に注意する必要がある。経済規模や外貨準備との関係から見てアンバランスな対外借入は、実体経済にマイナスの影響を与えることは、1997年のアジア通貨危機が証明している。特に、短期の外貨建借入れは、金融市場不安定化の大きな要因となる。海外からの大量の資金流入も国内経済の攪乱要因である。成長を目指すにあたり、本来的であれば、海外からの資金は有用であるが、その規模が、経済発展レベルとの比較で大きすぎると国内経済に悪影響を及ぼすことは、2007年1月にWTOに加盟した後のベトナムが証明している。

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