成長ファイナンスの推進

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2012年05月14日

  • 奥谷 貴彦
「成長ファイナンス推進会議」は、内閣官房に設置された内閣総理大臣直属の機関、国家戦略室において開催される会議である。事業の成長、再生、再編及び起業等に当たって資金を必要とする主体に対して、より円滑に成長マネーが供給されるための政府の取組について、各府省庁間で連携の上政策効果を極大化し、政府一体となって推進するために設置された。

2012年5月8日に成長ファイナンス推進会議は、政府が年央に予定する「日本再生戦略」の策定に向けての中間報告を取りまとめた。会議で提示された与党案では主に以下のような項目が提示されている。

  • 確定拠出年金の拡充
    確定拠出における家計による投信投資に加え、確定拠出外での一般的な投信投資も促進することを通じ、成長マネー供給拡大を図る。
  • 公的・準公的セクターにおける資産運用の改革
    年金積立金管理運用独立行政法人の運用は今後、国内債への投資比率の引き下げ、成長力のある株式やエクイティ・ファンドへの投資比率の引き上げなど、投資対象の多様化を行っていく必要がある。
  • 官民連携によるマイクロ金融プラットフォームを構築
    全国各地域の伝統産業やソーシャルビジネス、若者や女性の起業支援等を対象にした投資ファンドの組成を後押しする官民連携プラットフォームを構築する。
  • 「日本再生投資基金(仮称)」の創設
    「企業再生支援機構」を改組し、「日本再生投資基金(仮称)」を創設し、事業再生やベンチャー支援など、従来機関投資家の主たる投資対象ではなかった分野への資金供給を強化する。投資にあたっては「日本再生投資基金(仮称)」と指定運用機関との共同投資を基本とする。併せて、助成金を設けるなどの環境整備を行う。

成長マネーの供給拡大を図るには、預貯金に偏重する個人資産を成長マネーとして活用するべきである。東日本大震災においては、被災地の企業を対象としたネットを通じた個人投資が話題になった。このような個人の志あるマネーを呼び込む必要もあるだろう。また供給だけではなく、成長マネーの需要サイドである若者世代のチャレンジ機会の拡大も促進するべきである。このような問題に対して、民間主導の企業再生や創業・新分野進出支援、地域・中小企業向け資金供給の強化を図っていかなければならない。成長ファイナンス推進会議において更なる議論が積み重ねられ、実効性のある成長マネー供給促進策が策定されることを期待する。

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