同床異夢の空港コンセッション

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2012年04月10日

  • 長谷部 正道
政府全体としてPFIに取り組む姿勢が高まる中で、最近特に目立っているのが空港の分野である。2011年のPFI法の改正で公共施設等運営権(コンセッション)が創設されたのを契機に、国が全国で管理する27空港の運営を民間に委託するための民活空港運営法案を国土交通省は現在国会に提出している。

法律の目的としては、第一に、国管理空港の着陸料収入のプール制を廃止し、個別空港ごとに空港経営の効率化のインセンティブを付与すること。第二に、PFI事業者に空港ターミナルビルのみならず、従来国が管理していた滑走路等の管理も任せることにより、空港ビル運営の収益をもって、着陸料の削減を図り、LCCなどの誘致を可能として、就航路線・便数・利用者数の拡大を図り、地域経済の活性化の核となる魅力ある空港の実現を図ることを目指している。

何か良いことずくめのようだが、よく考えると違った方向のベクトルが働いていることに気づく。LCCをはじめとする航空会社から見れば、この機会にできるだけ無駄を絞った簡素で効率的な空港ターミナルビルを造ってほしいはずである。一方で、地域振興の観点からは、この機会に、新千歳空港や羽田の新国際線ターミナルに代表されるようなテーマパーク型のターミナルを民間のアイデアを満載して作りたいと考えるのも地元の人情である。

地元の要望を受けて、空港ターミナルの機能をあれもこれもと付加していくと当然コストも高くなるし、仙台空港のようにアクセス鉄道の運営などを含めれば事業リスクも格段に高まり、PFIの前提となるファイナンスの確保さえ難しくなることが考えられ、最悪の場合、当初の目論見とは正反対に、空港ターミナル事業の赤字を着陸料の値上げで補うというようなことさえ考えられるのである。

国管理空港のコンセッションについては、国が契約当事者となるため、こうした地元の要望を無制限に取り込むことはありえないにせよ、地域と向き合った個別空港ごとの個性ある運営を目指すとしている以上、地元の要望をまったく無視するわけにはいかないであろう。今後各空港のコンセッション契約の内容が具体化するにつけ、特に仙台のような地方の拠点空港といえるような空港については、国が航空会社と地元との間で利益相反の苦しい調整を行う事態になることも想定されるのである。

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