持株会社下のグループ体制

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2012年04月04日

  • 間所 健司
持株会社体制を採用する会社が増加している。その一方で、持株会社体制を解消する会社も少なからずある。本稿では、持株会社体制を採用した後、グループ体制がどのように変わってきたのかについて述べる。その形態はいくつかのタイプに分けられる。持株会社体制変遷のタイプとしては、(1)完全統合型、(2)子会社再編型、(3)初期体制維持型の3つに分類できよう。

「完全統合型」とは、一旦は持株会社体制としたものの、持株会社と複数の事業子会社が合併し、持株会社が事業会社化するタイプをいう。同業の2社以上の会社が経営統合を目的として共同して持株会社を設立した場合に多くみられる。この場合、持株会社体制がPMI(Post Merger Integration:合併後の統合戦略)を容易にするための一時的な体制と位置付けている。完全統合型の事例としては、第一三共、国際石油開発帝石、雪印メグミルク、JVCケンウッドなどがあげられる。

「子会社再編型」とは、持株会社体制を維持したまま、傘下の事業子会社において合併や会社分割などの再編を行うタイプをいう。持株会社体制のメリットは認識しつつ、統合シナジーを積極的に出そうという意思が感じられる。子会社再編型の事例としては、JFEホールディングス、三越伊勢丹ホールディングス、コニカミノルタホールディングス、JXホールディングス、明治ホールディングスなどがあげられる。

「初期体制維持型」とは、経営統合(持株会社化)時点の体制を引き続き維持しているタイプをいう。企業風土が大きく乖離していたり、歴史のある屋号の継続や人事制度の統一困難性といった事情から、再編が容易に進められないケースもみられる。ただし、このタイプは、今後「子会社再編型」となる可能性を秘めているといえる。

初期体制維持型でも、管理部門の統廃合や一部の業務系(物流や仕入部門など)の一元化などを少なからず進めることでシナジー効果を現出させようと努力を続けている。しかしながら、より大きな統合効果を得るためにはグループの体制を大きく見直す必要があるのではないだろうか。

とはいえ、グループ体制を見直すにあたっても、そもそもどのような再編があり得るのか。経営としては、正のシナジー、負のシナジーをしっかり見極めながら、あるべき姿を追求しなければならない。そのとき注意しなければならないのは、グループ内にある反対勢力、つまり大きな変化を是としない風潮である。そのため、場合によっては第三者の目を通しながら、新しいグループ体制を構築するという姿勢を持ち続けるということは重要である。

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