日本に必要な金融政策

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2012年02月23日

  • 小林 卓典
日銀は2月14日の金融政策決定会合で事実上のインフレ目標政策に移行した。これをきっかけに円安、株高が進行している。日銀は従来の「中長期的な物価安定の理解」という政策意図を捉えにくかった表現を「中長期的な物価安定の目途」という数値目標の意味をより明確に伝える表現に変更した。それでも目途という言葉の持つあいまいさから、これをインフレ目標と呼ぶことには少し違和感を覚えるものの、日銀のデフレ脱却に対する姿勢が変わるのではないかと市場は前向きに受けとめている。

これまで日銀は、デフレ払拭に対して消極的あるいはグローバル化による物価下落圧力と人口高齢化による需要減少を理由にデフレ脱却を諦めているのではないかとさえ思わせるところがあった。今回の政策変更の背景には政治圧力があったとする見方もあるのだが、日本経済の状況を変化させることへの期待は大きい。もちろん物価目標を提示しただけでは状況は変わらない。これからは今まで以上に政策の結果が問われることになる。

その点で鍵となるのはやはり為替レートである。円高が修正されれば景気、雇用は改善する。成長戦略も円高修正の後押しがあったほうが行いやすくなる。中央銀行の基本姿勢として円安を誘導するために金融緩和を行うことはないとしても、通貨に影響を与えない金融政策はありえない。

FRB(連邦準備制度理事会)は、2013年半ばまで続けるとしていた事実上のゼロ金利政策を雇用回復が軌道に乗り始めた段階となって、あえて2014年まで延長すると表明した。こうしたダメ押し的な金融政策は、長くデフレと円高に悩んでいる日本にこそ必要な政策である。

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