ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)が人々から「アンフレンド」されないために

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2012年02月22日

  • 二宮 聡広
2012年2月5日、この日はニューヨークのNFL(National Football League)ファンが歓喜に満ちた日であった。NFLの頂上決戦Super Bowlにて、ニューヨークを本拠地とするGiantsが強豪Patriotsに勝利したのである。Super Bowlの翌日は、試合内容のみならず企業が数億円かけた新コマーシャルや、ハーフタイムのマドンナの年齢を感じさせない力強いパフォーマンスなどで話題が持ちきりになった。そんな中、Super Bowlが樹立した新たな数字が話題に上った。それは、試合終盤にSNSサイト「Twitter」にて1秒あたりの「つぶやき」数が全米最高の12,233件(※1)に達したというものである。このつぶやき数は昨年のSuper Bowl放映時の6倍にあたり、SNSの急成長を大きく裏付けている。

情報量の増加のみならず、SNS上の情報を分析し、そこから得た分析結果を政治やビジネスで活用するケースもこの数年みられる。例えば、オバマ大統領は、データ分析の専門家を集めてSNS上の政治関連情報を分析し、選挙戦略に活かそうとしている。また、ソーシャルメディアをリアルタイムに分析して、センチメント(市場心理)を得る投資方法を採用するヘッジファンドや証券会社も現れてきている。

このようにSNSによる情報発信、ならびに情報分析・活用は広がりをみせている。その一方で、SNSを「時間の無駄」とし、利用を停止する人々が出始めているのも事実である。友人の近況やつぶやきをリアルタイムで閲覧できることと引き換えに、SNSに費やす時間が増加しているためである。SNS上では友人をアンフレンド(友人リストから外す)や設定変更しない限り、閲覧可能な情報量は増え続ける。加えてSNS上の知り合いは必ずしも気の知れた友人に限らないため、価値ある情報が得られないことも多くなる。当の私も増え続ける情報の更新についていけず、最近は暇な時にしかSNSを利用しなくなった。これは利用者が増加したことにより新たに発生した課題であろう。

私は今後SNSが発展していくために必要な視点の1つとして「使いやすさ」を挙げたい。情報量がある一定を過ぎると情報を選択する必要が生じるため、ユーザが興味のある情報を素早く見つけられることが求められる。すでにSNSサイトでは、ニュースフィードに流す条件をユーザ自身が設定できる。また、ニュースの重要度を独自アルゴリズムにて算出し情報量を制御しているSNSもある。このようなユーザ毎に異なる嗜好に適った情報を選び出す仕組みが今後一層重要になるのではないだろうか。例えば、履歴データなどからユーザの嗜好を徹底的に分析し、ユーザが好むテーマを元にそれと相関性の高いニュースを自動的に選択できればユーザは価値の高い情報を得ることができるだろう。膨れ上がる情報を前にして利用者が「時間の無駄」と感じる前に、ユーザの利用傾向を分析し「使いやすさ」を追求できるかがSNSの更なる普及のポイントになるのではないだろうか。

(※1)Twitterにおける1秒あたりのつぶやき数世界No.1は、日本のアニメ「天空の城ラピュタ」テレビ放映時の25,088件。クライマックスで主人公達のセリフ(呪文)をTwitterユーザが一斉につぶやいた。

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