日本化の本質

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2012年02月02日

  • 木村 浩一
1月6日、政府、与党から社会保障・税一体改革の素案が発表され、消費税引上げの道筋が明らかになった。国内貯蓄が減少し、国際収支が悪化している中で、先進国では最悪の財政の立て直しのための時間の猶予はなくなりつつあり、一体改革の速やかな実行が待たれる。

バブル崩壊後、財政再建のため消費税引上げが何度か提唱されながら、反対が多く実現されなかった。その反対の理由の1つとして、今は景気が悪く消費税増税のタイミングではない、景気がよくなってから消費税を引き上げるべきだ、という主張があった。

しかし、1990年代後半以降、名目GDP成長率が3%を上回った年はなく、名目GDPは1997年の523兆円をピークに減少が続いている。また、日本の就業者数は1997年6月(6,584万人)をピークに減少に転じ、2011年11月には約300万人減の6,249万人となり、今後も、高齢化、人口減少により、就業者数は大きく減少していく。経済成長率が就業者数の増加率と労働生産性の上昇率の和とすれば、人口減少は長期にわたって経済成長率のマイナス要因となっていく。

財政赤字は、経済が拡大し人口が増加している時には対処が可能であっても、人口が減少し経済規模が縮小していく中では、将来世代に過酷な負担を先送りしているにすぎない。

政治が決断できないことに起因する低成長、デフレ、財政悪化、低金利、低株価を表象化して日本化と言われているが、高成長、人口増加を前提に作られた制度の見直しを怠り制度疲労を起こしていることが日本化の本質であり、我が国は一刻も早く大胆に制度を改めるべきだろう。

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