企業統治と持株会社
2011年11月30日
最近、わが国の企業統治において衝撃的な事件が相次いだ。大王製紙とオリンパスの件を機にコーポレート・ガバナンス論議が再燃している。これらの事件が本当にコーポレート・ガバナンスにおける本質的な問題だったのか、システムの機能不全だったのかは、今後の経緯を見守るしかないが、制度(システム)上の問題もさることながら、運用する人の問題といった方がより適切であると思われる。
わが国の取締役制度において、社外取締役を入れている会社もかなりの数となってきているが、その一方で、常務取締役営業本部長とか、取締役財務部長といった監督機能と業務執行機能が未分化なケースが圧倒的に多い。それを形式上明確に分離したのが委員会設置会社である。
委員会設置会社は監査役を廃し、社外取締役を中心とした指名委員会、報酬委員会、監査委員会からなり、業務執行は執行役(執行役員ではない)に任せ、監督機能と業務執行機能を分離したシステムである。ただし、取締役と執行役は兼務することが可能である。せっかくの委員会設置会社でありながら未分離のケースもあり得る。
監督機能と業務執行機能の分離がもっともピュアな形で体現しているのが持株会社体制であると考えている。しかしながら、持株会社と事業会社の取締役のほとんどが兼務をしている会社も少なからずあり、これも同様な問題が発現される可能性が高い。とはいえ、株主に直接責任を負うのは持株会社の取締役であり、業務執行はすべて事業子会社が行っており、物理的にも完全に分離しているという点では持株会社体制の方がはっきりとしている。コーポレート・ガバナンスの強化以外で、M&Aの推進や事業選別の強化等といった持株会社体制の別のメリットが享受できる会社(企業グループ)であれば導入の検討に値すると思われる。また、持株会社体制と委員会設置会社は同時に導入することが可能なため、それによってより強固な体制を築くことができるものと考えられる。
しかしながら、委員会設置会社に移行するとか、持株会社体制を構築するためには、これまでよりコストアップは避けられない。コーポレート・ガバナンスのためだけに導入するのであれば、中堅以上の会社規模でなければ難しいと思われる。
とはいえ、いずれの体制、システムにおいても完璧なものではない。結局は、会社経営者個人、取締役個人の意識改革以外にないというのではあまりにも寂しいことではないか。
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