日本復活への道 ~やさしい問題から解く~
2011年10月20日
アジアの国々の経済状況を見ると、中国、インド、東南アジアが概ね高成長を享受している一方で、日本は、相変わらず、低成長、デフレに苦しんでいる。こうした状況にありながら、日本は今後、世界的に見ても、かなり厳しい高齢化社会に突入していくことが確実となっている。高齢化社会となれば、必然的に、年金、医療等の社会保障負担の大幅増加は避けられない。
何とかお金を生み出す手立てが必要だが、これまでのところ、明るい展望が開けるような案は見当たらない。たとえば、年金支給の開始年齢引き上げの案は、いくら平均寿命が延びているからといっても、若者を中心に年金制度への不信感を助長してしまうリスクがあるし、定年延長といっても、企業のコスト負担を考えると簡単ではなさそうである。
日本は、将来不安を軽減するために、一体どんな対策をやればいいのだろうか。一応成熟した社会、高齢化、人口減少などの様々な客観的データから見て、残念ながら日本はもはや、単独では経済に勢いを取り戻すことが難しくなっている。この環境では、昔のような高成長は、到底望むべくもなく、成長戦略と言われても、何かしら、むなしさを感じてしまう。何気なく毎日が過ぎ、それ程の刺激もない。しかし、そんな日本にも未来は来るので、何か考えなければいけない。その場合、キーワードになるのは、「活力吸収」である。簡単に言えば、経済活動のターゲットを活力低下している日本ではなく活力みなぎる新興国に置くということである。日本がこれまで築き上げてきた知恵や経験を十分に活用して、経済成長の勢いがある新興国の人々の活力を吸収する仕組みを考えることが必要である。
「活力吸収」といった場合、日本の新興国への進出だけではなく、新興国の人の日本への来日も含まれる。具体的には、(1)企業の更なる海外展開、(2)就職先として新興国企業選択、(3)アジア各国時間的距離短縮のための、日本の空港、鉄道インフラ整備、(4)外国人にストレスが無くなるような日本国内のハード、ソフト面での整備等である。既に、実施されているものも多いが、まだまだ不十分と言わざるを得ない。こうした動きに勢いをつけるには、日本人自体の意識を、これまでの国内志向から抜本的に切り替える必要がある。日本は安全で良いところに違いはないが、日本企業のみが就職先ではないし、また、日本語だけが言葉ではないという意識をより鮮明に持ち、経済活動の範囲を世界全体にまで広げる努力が必要だろう。そして、一人一人が、より国際化に対応できるスキル(言語、ビジネス慣習、知識)を磨いていくべきである。
「成長する」という課題に対して、何も難しい問題(日本の活性化)から手をつけて苦しむことはない。それよりも、よりやさしい問題(新興国の需要吸収)を確実にこなして得点(経済成長)を重ねたほうが効率的だ。政府、企業ともに、こうした考えに基づいた行動をし、その方向を進展させることに、優先的に資源配分を行なっていくべきだ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
上場オーナー企業と公開買付制度・大量保有報告制度の見直し
2026年5月1日に大量保有報告書等の提出義務が発生する場合も
2026年05月15日
-
デジタルアイデンティティ・デジタルクレデンシャルをめぐる取組みと実装技術の論点整理(第1部)
デジタルアイデンティティの基本像と、EUDIウォレットにみる制度化・実装動向
2026年05月14日
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 何故、わが国では潜在成長率が低迷しているのか?
高市政権は成長戦略を強化する方針だが、①労働、②資本、③TFP(全要素生産性)という3つの要素をバランス良く底上げする必要
2026年05月13日
-
AIが変える議決権行使助言業
中立性・客観性確保のための利用を訴求へ
2026年05月13日
-
中東リスクがASEAN進出企業に与える影響の差は、どのように生じているか?
2026年05月15日

