復興における官民連携の推進に向けて

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2011年10月12日

  • 三橋 忠
東日本大震災からちょうど7か月が過ぎた。この間、政府は「東日本大震災からの復興の基本方針」(8/11改定)を、岩手県は「岩手県東日本大震災津波復興計画」(8/11)を策定、宮城県でも「宮城県震災復興計画」が間もなく策定される予定である。また、福島県では「福島県復興ビション」が策定され、現在復興計画を策定中の段階にある。

表現は異なるが、いずれの計画の中でも官民連携が盛り込まれている。特に、政府の基本方針では、” 民間の資金・ノウハウを活用したファンドや官民連携(PPP)、PFIや土地信託手法による復興の推進”といった具体的な方法まで言及されている。

今回の震災は未曽有の被害をもたらし、公的部門が主体となった復興が不可欠ではあるが、非常に厳しい財政状況に加え、人材やノウハウの面でも公的部門だけでは十分とは言えない。

一方、今回の震災は日本全体の問題でもあり、全国の民間企業や個人の復興に対する支援意欲は大変強い。また、公的部門とは異なる民間ならではの人材、ノウハウ、資金力などがあり、今回のような大震災の復興においては、これまで以上に官民連携が重要となるのは異論のないところであろう。

官民連携のメリットは、単に財政負担の軽減につながるだけでない。復興事業への民間経営ノウハウの活用やマーケティング志向等を通した事業の効率性向上、ビジネスマインドの導入による創意工夫、創造力・展開力の向上などの効果もある。また、復興事業に関わる企業や個人がその地域に関心を持ちその地域のサポーターとなることも期待される。更に、早めに官民連携事業の実績をつくることにより、他の官民連携事業の呼び水となるなど、様々な効果が期待される。

では、官民連携を推進するためには、どのような取り組みが望まれるのか?

結論から述べると、民間が参入しやすい環境づくりを提案したい。具体的には、官民連携に際し、民間が必要としている情報を適時的確に提供することである。

民間からの寄付金や人材等の無償提供は、どうしても一過性になりがちである。しかし、復興は中長期的に継続しなければならないものであり、民間部門が継続的に復興に参画するためには、やはり持続的な事業性が不可欠である。

事業性を検討する際、収益性とリスク(安全性・安定性)の評価が重要である。まずこれらに直結する各種補助制度や支援策、規制緩和、土地利用規制等が確定した時点で速やかに情報提供することが望まれる。併せて市町村事業の標準化や広域化なども図れれば更に事業性が向上する。加えて、民間が各地域の復興ニーズに即した提案ができ、県や市町村側もそれを適切に検討できるよう、官民連携のニーズが高い事業分野、提案の適切なタイミング、提案を受ける窓口機関、参画の条件、事業環境等に関する情報も併せて提供していくことが望まれる。

また、このような情報提供をホームページ、説明会・フォーラム、現地視察会等を通して公的部門から積極的に民間に発信すると同時に、民間からの提案を受け付ける体制をきちんと構築していくことが極めて重要である。このような状況が整えば、多くの復興支援に意欲的な民間企業等からの積極的かつ有用な提案を適切に受けられ、より良い復興につながると考える。また、このような取組みの有無が復興のスピードを左右することも十分考えられる。

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