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地価沈む国の「教訓」を見直すとき

2011年09月28日

金融調査部 主任研究員 長内 智

欧州の財政・金融危機がグローバル金融市場に暴風雨を巻き起こし、世界経済を揺さぶっている。今回の欧州問題の発端は、2009年10月に明らかとなったギリシャ政府による財政赤字の粉飾である。しかし、財政赤字が湧き出る源流まで遡ってみると、事の始まりは、2000年代の欧米の不動産バブルとその崩壊へと行き着く。不動産バブル崩壊後に起こった世界的な金融危機と景気後退を食い止めるために、世界各国が実施した巨額の財政出動が赤字額を膨張させ、各国政府の財政を急速に悪化させたのである。

米国も不動産バブル崩壊の後遺症に苦悩している。米国の景気は2009年6月に底入れしたが、それから2年以上経過した現在でも失業率は高止まりしており、住宅・不動産市場も軟化傾向が続く。今年の8月初め、米国の格付け会社が米国長期国債の格付けを最上位から1段階引き下げたことが金融市場を大きく動揺させたが、これもバブル崩壊後の積極的な財政政策の代償と捉えることができる。新興国に目を向ければ、中国において不動産のバブルが膨らんでいる最中にあり、中国政府は不動産価格高騰の抑制に頭を悩ませている。

欧米中のバブルの形状には異なる部分が幾つもあるが、総じてみると、これらは日本で80年代後半以降に発生した不動産バブルの焼き直しに過ぎないと言えよう。そして、この事実は、今まで日本のバブルの「教訓」と言われてきたものでは、バブル再発とバブル崩壊後の長期不況を防止できない可能性があることを示唆している。例えば、よく耳にする教訓として、(1)日本のバブルの膨張は金融政策の引き締めを適切に実行していれば予防できた、(2)バブル崩壊後に迅速かつ大幅な金融緩和をしていれば長期不況を避けられた、が挙げられる。

前者に対しては、日本の教訓を学んでいたはずの欧米中の失敗をみる限り、不動産バブルを発生させない適切な金融引き締め政策というのは本当に実現可能かという点が疑わしい。加えて、中国の不動産取引規制の導入などを踏まえると、政策金利の引き上げだけでは住宅価格の抑制は困難であり、不動産に関する制度や規制の再構築が重要な論点であるように思われる。後者の教訓は、欧米のように迅速かつ大幅な金融緩和を行っても不動産バブル崩壊の影響が長引いていることを鑑みると、少なからず修正が必要である。

今月発表された2011年度の「基準地価」が20年連続の下落となったように、実は日本の不動産バブル崩壊というのは決して過去の話ではない。現在、欧州問題に注目が行きがちであるが、日本も自らの「教訓」を見直すと同時に、内需の立て直しなどによってバブル崩壊の歴史に完全な終止符を打つときではないだろうか。

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