新たなエネルギー社会の構築に向けて
2011年09月27日
化石燃料の枯渇問題、二酸化炭素の排出削減問題、原発問題などから今、再生可能エネルギーが注目を集めている。例えば化石燃料の枯渇問題などは、東日本大震災の数日後に、都内でガソリンの供給が止まり、ガソリンスタンドに列をなして並ぶ車の光景を目にした方であれば、もし本当に枯渇した場合にいかに社会に大きなダメージを与えるかを認識できるであろう。また、電力不足による不自由さの経験を得て、エネルギーが有限であることを学び、省エネに対する国民意識が高まった。
近年に入って、油を含む砂の層(オイルサンド)や岩石(オイルシェール)、さらにはシェールガス、メタンハイドレートといった新たな化石燃料が台頭してきたが、いずれ化石燃料に終わりを告げる日が来るのは避けて通れない。重要なのは、その間にどのように備えておくのか、特に、世界レベルで再生可能エネルギーの活用度をどこまで高めておけるかということであろう。今後この再生可能エネルギーの活用を高めるうえで期待されるポイントはどこにあるだろうか。
1つは太陽光発電や風力発電などの装置の“高効率化”であろう。これは、再生可能エネルギーが生み出す電気の価格の低下にも寄与する。従来の太陽光発電であれば、太陽光エネルギーを電気に変える変換効率が、高いものでも30%ぐらいであるが、例えば、現在開発中にある「量子ドット太陽電池」では、理論上、その2倍以上の変換効率も可能といわれている。日本人は、新しい市場を開拓するよりも、製品改良の能力に優れていると考えられるため、一般家庭住宅まで市場が浸透した太陽光発電などについては、国内での性能向上スピードは、案外速いのかもしれない。また、装置の高効率化を追求するだけでなく、エネルギーの平準化や安定化の向上を図っていくことも重要である。
もう1つはバイオマスなどの“生産するエネルギー”の進展であろう。サトウキビやとうもろこしなどからバイオエタノールを生産する技術は有名となったが、最近では、食糧問題との兼ね合いもあって、もみガラや木くずからの生産技術が進んでいる。さらには、藻類から抽出して燃料を製造するという技術も開発されている。また、代替燃料として水素が注目されているが、植物と同様な機能を触媒に持たせて水素を生成する「人工光合成」も期待される。化学界でも注目を浴びる分野であり、国内でも多くの化学者が研究に携わっている。
今回、東日本大震災がエネルギー問題の警鐘を鳴らす引き金となり、結果、エネルギーに関する多くの情報が社会に流れることとなった。しかし、たとえそれがなかったとしても、エネルギーに対する意識改革を持たなければいけない時期に来ているのかもしれない。国土の限られた日本にとって、エネルギー産業は、今まで蓄積されてきた様々な技術を多分に活かせる事業分野であり、この国内の経済不況を脱する機会を与えてくれる可能性がある。各種メーカーが一段となって、先陣を切ってエネルギー市場を開拓していくことを期待したい。そして、それを支援する政府の取り組みにも期待したい。
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