持続可能な支援の仕組み
2011年09月14日
東日本大震災では、常に公平性の縛りを受ける行政を補う形でボランティアが迅速かつ多彩な活動を展開している。しかし、このさき人々の善意だけに頼って支援を継続させていくことは難しい。兵庫県の推計によれば、阪神・淡路大震災後5年間でボランティア活動を行った人は延べ217万人に上った。この内117万人は震災後3ヶ月で集まった人々である。ボランティア数はその後5ヶ月の間、月平均2万7,000人ペースまで落ち、震災後9ヶ月以降は同2万人を切るようになった。今回の震災でも同じ傾向を辿るとすれば被災地に向かうボランティア熱を帯びた人の波は年内には収まることになろう。個人の寄付金額を見ても、阪神淡路大震災があった1995年こそ2,500億円を上回ったが、その翌年以降は再び1,500億円ペースに戻ってしまった。
持続可能な支援の仕組みを作る上で参考になると思われるのが途上国支援である。災害時緊急支援と異なり世界経済に継続的に横たわる問題なだけに、持続可能な支援の仕組みが機能しているからだ。その一例を紹介しよう。筆者は国際NGOプラン・ジャパンを通じて途上国の地域開発プロジェクトに僅かばかりの寄付を行っている。このプランの特長は特定の子供と手紙のやりとりが出来、1年から1年半に1回、その子供の成長記録と共に自らの寄付が向かった地域プロジェクトの進捗状況が報告されることにある。両者の交流は多数の翻訳ボランティアによって支えられており、外国語が出来なくても問題はない。両者が望めば、直接会って話をすることも可能だ。また、寄付者が簡単な質問に答えるだけで季節の挨拶文や日本文化の紹介文が出来上がる手紙フォーマットが年数回届けられる等、交流が継続して行くような仕組みが随所に施されている。
今回の震災復興においても、まずは活動のハードルを低くして多数の支援者を呼び込み、大きな流れを作り出すことが肝要だろう。その際に、顔の見える仕組みを施して一過性になりがちな人々の善意を継続させることがポイントとなる。財団法人経済広報センターがインターネットを通じて3,171人に行った調査によると、5月時点でボランティア活動を行っている人27%に対して、今後ボランティア活動に参加したい、機会があれば参加したいと答えた人の総計は83%だった。意欲があっても動き出していない人、継続的な活動には至っていない人はまだいる。そうした心を放っておかず形にする仕組み作りに社会を挙げて取組むべきだろう。

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