浸透していくMoSoLoCoアプリ

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2011年09月13日

  • 二宮 聡広
つい先日、南米のパリと呼ばれるアルゼンチンの首都ブエノスアイレスへ初めて旅行に行ってきた。スペイン調の美しい建造物、美味な肉料理にみられる華やかさの側ら、商業地区の近所にビジャと呼ばれる貧民街が広がるなど様々な顔を持つ街であった。そのブエノスアイレスで特に嬉しかったのは無料WiFiサービスがホテルや喫茶店で受けられるなど、インターネットサービスが充実していたことである。また、ITを活用した観光サービスも整備されていた。たとえば街の様々な建造物を説明する看板にwww.facebook.com/~~とURLが表示されていた。これを辿ると、facebookユーザによる当建造物に関する情報やコメントを取得できる。書込みはスペイン語で書かれていたため私には内容の理解が困難であったものの、SNSが口コミの観光ガイドブックとなることに感心した。

このようにモバイル・SNSを活用したITサービスは、世界中で進化を続けている。ニューヨークで開催されたあるセミナーにて、大手企業のCTOが『今の時代はMoSoLoCoである』と述べていた。このMoSoLoCoとはMobile(モバイル)、Social(ソーシャル)、Local(ローカル)、Commerce(コマース)の頭文字をとったものである。最近はスマートフォン(モバイル)などを用いて至るところで情報検索ができる。友人との情報共有(ソーシャル)に関しては、facebookだけで加入数が7億以上に達している。また、インターネットを通じたホテル予約や航空券購入(コマース)も日常となっている。

それに加え、地域(ローカル)に特化したアプリケーション(以下アプリ)の多様化がみられる。天気や地図、レストラン情報のアプリはすでに充実している。上記に挙げた観光地のSNSの活用もその一例であろう。ニューヨークでも観光者向けのモバイルアプリには様々なものがある。そのほか、私のイスラム教の知合いはラマダンの断食時間やお祈りの時間を確認するために、毎日変わる日出、日入りの時間などを確認するアプリを使用している。

このように、MoSoLoCoの流れは日常の生活にじわじわと入り込んでいる。そして、いつでもどこでも自分に必要な情報を取得するのみならず、配信し共有できるまでに至っている。さらにこの動きは企業の事業活動にも浸透していくとみられる。社員一人一人の声を業務プロセス改善に活かすための情報共有や、社内SNSによる社員の経験や知識の公開などである。その会社・部署・現場に特化したローカルな分野においてもモバイルやSNSの活用は有効なのではないだろうか。

今回のブエノスアイレスへの旅行でITサービスの充実は感心したものの、言葉の壁には困惑した。アルゼンチンの一般社会ではスペイン語しか通じないのである。何故日本では英語一辺倒の教育を受けるのか、と憤りを感じるのも束の間、モバイルを通した翻訳機能など言葉の壁を解決するMoSoLoCoアプリの登場も近いのでは、と感じるのは私だけであろうか。

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