大型経営統合の向う道
2011年08月31日
世界トップクラスの総合鉄鋼メーカーを目指して、新日本製鐵と住友金属工業が来年10月を目途に経営統合の検討を進めている。この統合が実現すると世界有数の鉄鋼メーカーが誕生することとなる。
本件に限らず、これまでわが国では様々な業界において、同様の大型の経営統合が行われてきた。
まず取り上げるのは医薬品業界である。医薬品業界では、国内大手同士の経営統合が盛んに行われてきた歴史を持つ。2005年に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併してアステラス製薬が誕生。同年、三共と第一製薬も経営統合し、第一三共が設立された。また、同じく2005年は大日本製薬と住友製薬が合併し、大日本住友製薬が誕生した年でもある。2007年には田辺製薬と三菱ウェルファーマが合併し、田辺三菱製薬が誕生した。規模を拡大し創薬メーカーに不可欠な研究開発費を確保する目的がある。とはいえ、いずれの会社も世界の医薬品メーカーランキングでは10位にも達していない。最近では、アステラス製薬のOSI Pharmaceuticals社の公開買付けや、武田薬品工業のNycomend社の買収にみられるように、国内よりもグローバルへの動きが活発にみられる。
さらに、百貨店業界も2007年頃から経営統合が活発化し、2007年には阪急百貨店と阪神百貨店が経営統合し、エイチ・ツー・オー リテイリングが誕生した。同年には、J.フロント リテイリング(大丸、松坂屋)が誕生し、翌2008年には三越伊勢丹ホールディングスが設立された。
最近では、新日本石油と新日鉱ホールディングスが経営統合してJXホールディングスが設立されたことは記憶に新しい。
その一方で、世界的にも競争力のあると考えられるわが国の代表的な産業である「自動車」「電機」の業界においては、これまで大型の経営統合の話題はあまり聞こえてこない。特に自動車産業は世界で一二を争うものであるからかもしれないが、将来的な新興国の台頭に対抗していかなければならないと考えると、国内企業同士の経営統合もひとつの選択肢といえるかもしれない。
電機メーカーにおいても救済的な経営統合や、エレクトロニック分野(特に半導体分野)におけるM&Aは散見されるものの、世界で勝ち残るための戦略的な経営統合はまだまだ少ないといえる。
超ニッチな産業、企業を別にすれば、国内市場における競争の激化、少子高齢化による経済の縮小、そのための海外進出など、企業経営は今後とも厳しさを増していくものと推察される。そのために様々な産業において、グローバルな生き残りをかけた大手企業同士の大型経営統合が少なからずでてくるものと期待したい。
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