中国における環境ビジネスと日系企業
2011年08月15日
中国で本年(2011年)よりスタートした第12次5カ年計画(2011年~2015年)では、計画の基本的な考え方を示す「指導思想」の一つとして「資源節約型・環境友好型社会の建設により経済発展方式を変換する」ことが明記され、同計画では省エネや大気汚染・水質汚染物質の削減などが国家目標として盛り込まれた(※1)。
中国では大気汚染、水質汚染、ごみ処理問題やエネルギー消費の増大などの環境・エネルギー問題が多数存在している。政府はこれらの問題が将来的に国民生活や経済の発展に対する深刻な制約になるとの危機感を強めており、2000年代以降、法整備や関連施策の実施などの取組みを強化している。
政府による環境問題への取組みは環境保護関連産業(中国語では節能環保産業)の拡大を促しており、中国政府の予測では同産業は2010年の2.2兆元(約30兆円)から2015年に4.5兆元(約54兆円)に拡大する見通しである(※2)。
環境保護関連産業の拡大は日系など外資系企業にとっても大きなチャンスであり、政府も税制優遇や外資系企業の同産業への参入の促進などの施策を打ち出している。既に欧米企業による参入が活発化しており、水処理やリサイクルなどの分野で実績を挙げている。一方で、日系企業も環境分野への進出は増えているものの、欧米企業に比べて苦戦を強いられているという印象を受ける。
その原因は、「技術」ではなく「マーケティング」にあるのではないかと思われる。一口に中国の環境問題といっても、上述したように大気、水、省エネ、リサイクルなど多岐にわたるうえ、さらに広大な面積を有する中国では地域ごとに環境問題の状況も異なっている。このような各地域の現状について日本企業は理解が遅れているという指摘もある。また、日本側の製品は高い技術を持つが価格も高いが、現地では「技術力も価格もそこそこ」という製品が求められるというギャップも生じていると言われている(※3)。
これらの課題を解決するには、現地でのマーケティング力の向上が不可欠であると考えられる。そこで、中国における環境ビジネスを手掛ける企業に対し、進出先地域での環境問題の理解を深め、現地のニーズを汲み取って分析する「中国環境専門員」などの人材育成策を提案したい。もともと日系企業の技術は中国内でも高い評価を受けており、多くの環境問題を抱える中国において日系企業の果たせる役割は大きい。専門家の育成により現地の状況を深く理解することで、日系企業は技術力とマーケティング力の両面で強みを持つことになり、今後の事業展開を有利に進められることになると考えられる。
専門家の育成は一朝一夕には難しいが、将来的には中国以外のアジア地域でも環境問題への関心がいっそう高まることが予想される。環境ビジネス市場での事業拡大を狙う企業には、長期的な視点からも「現地の事情に精通した」専門家の育成が有効な手段になることを指摘したい。
(※1)中国の国家計画における環境目標の概要については、http://www.dir.co.jp/souken/research/report/esg/esg-news/11062401esg-news.htmlをご参照されたい。
(※2)2011年4月21日付財経網電子版ウェブサイト掲載記事(http://www.caijing.com.cn/2011-04-21/110698386.html)など中国内の報道による。
(※3)中国内の報道や専門家の意見を参照した。
(※2)2011年4月21日付財経網電子版ウェブサイト掲載記事(http://www.caijing.com.cn/2011-04-21/110698386.html)など中国内の報道による。
(※3)中国内の報道や専門家の意見を参照した。
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