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生産と消費マインドの改善格差

2011年07月11日

金融調査部 主任研究員 長内 智

東日本大震災から4ヵ月が経過した。震災によって大幅に落ち込んだ生産は急ピッチでの回復が続いている。震災直後は、計画停電やサプライチェーンの寸断といった過去に前例のない深刻な事態が発生したことから、生産活動の復旧には相当の時間を要するとの見方が大勢であった。しかし、メーカー各社の懸命な努力の甲斐あって、復旧作業は前倒しで進んでいる。日本の製造業の底力を垣間見ることができた4ヵ月だったと言えよう。

一方、事前の想定よりも本格的な回復が遅れそうなのが消費者マインドである。消費者マインドは震災後に大きく悪化してから改善方向に転換しているものの、生産と比較するとその改善ペースは緩やかなものに留まっている。実は、今回と同じように阪神・淡路大震災の後も、生産と消費者マインドの「改善格差」が生じていた。当時を振り返ってみると、生産は地震が発生した翌月からプラス基調に転じてその後も着実に拡大を続けたが、消費者マインドの改善には約1年かかったことが確認できる。

つまり、現在起きていることは当時の「焼き直し」に過ぎず、消費者マインドの改善の遅れについては、あまり心配する必要はないかもしれない。ただし、(1)東日本大震災の甚大な被害、(2)電力供給問題、(3)放射能汚染問題、(4)復興計画の遅れ、等のように、阪神・淡路大震災のときよりも消費者マインドを取り巻く環境が厳しい点に注意が必要である。消費者マインドが経済に悪影響を及ぼす経路は複数あるが、今回は「消費マインドの改善の遅れ→消費の伸び悩み→商品在庫の積み上がり→生産の回復ペースの鈍化」という、需要の抑制が供給の重石となる経路に気をつけたい。

東日本大震災による日本経済の急速な悪化はあくまでも突発的な供給ショックであるため、「需要サイド」と「供給サイド」という二分法に基づいて、供給サイドに軸足を置いた政策を優先することは正しい。しかし、現実の需要と供給には、上述したような相互依存的な関係があることを完全に忘れてはなるまい。今後の復旧・復興においては、供給サイドの政策はもとより、需要サイドである消費者マインドを置き去りにしないような視点も必要だと考える。

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