G20に中国はどう向き合おうとしているのか(二つの国際会議を通して見る)
2011年07月08日
6月下旬、北京で中国のシンクタンクが主催する二つの国際会議が開かれた。ひとつは、中国国際経済交流中心主催のグローバル・シンクタンク・サミット、もうひとつは社会科学院国際経済政治研究所が主催したアジア研究論壇である。期せずして(と考えてよいと思うが)、両会議で大きなテーマとされたのは、いわゆる「国際経済ガバナンス」の問題である。国際通貨体制、グローバル・インバランス、金融危機対応等の経済問題に、国際社会としてどう対応していくのかを検討する国際的枠組みとして、WTO,IMF,世銀、G7、G20等がある。従来、こうした場は、基本的に米国を中心とする西側先進国によって主導されてきたが、中国として、これらの組織・枠組みをどう評価し、どのように対応していくべきかという問題意識が、最近中国国内で大きいことの表れである。以下、特にG20への対応・評価を中心に、両会議で展開された議論を見てみたい。
両会議に参加した多くの中国側研究者からは、
(1)中国の台頭は、既存の多国間の枠組みを破壊するものではなく、それを支持し、その中で中国としての役割をシェアしようとするものであり、それが中国の利益にも合致する、
(2)様々な国際的枠組みは、国際公共財を提供するプロセス。IMF,G7,G8といったこれまでの枠組みに比し、G20はより多くの国が関与している点でより適法性(legitimacy)がある、
(3)国際的枠組みを通じて、国家利益をどう達成していくかが中国としての最大の課題であるが、適法性、公平性の観点からG20が望ましい。EUや米国などとのバイラテラル(bilateral)の話し合いでは劣勢に立つことが多く、G7やG8は、先進国との関係で「居心地が悪い」、
といった発言が多く、中国として、現在のG20の枠組みを評価し、これに積極的に関与していこうとする姿勢が顕著である。海外からのある研究者(華僑)も、中国に何か新たな国際秩序を作ろうとするインセンティヴはなく、既存の枠組みに参加しようとするプラグマティックなアプローチであるとしている。さらに同研究者は、中国が伝統的に採ってきた外交方針、韬光养晦政策(後ろに下がって目立たない)を見直すべきかどうかは、中国国内で議論中で、なお結論は出ておらず、当面は部分的にせよ同政策の影響を受けるかもしれないが、中国は明らかに以前にも増して、国際的枠組みに積極的に参加しようとしてきていることは明らかとしている。また、他の複数の海外からの参加者は、G20として恒久的事務局を作るべきで、それがG20での議論の連続性を保ち、またIMFなどが有している技術や情報を活用すべきであると、G20の強化・活用を強調している。
(1)中国の台頭は、既存の多国間の枠組みを破壊するものではなく、それを支持し、その中で中国としての役割をシェアしようとするものであり、それが中国の利益にも合致する、
(2)様々な国際的枠組みは、国際公共財を提供するプロセス。IMF,G7,G8といったこれまでの枠組みに比し、G20はより多くの国が関与している点でより適法性(legitimacy)がある、
(3)国際的枠組みを通じて、国家利益をどう達成していくかが中国としての最大の課題であるが、適法性、公平性の観点からG20が望ましい。EUや米国などとのバイラテラル(bilateral)の話し合いでは劣勢に立つことが多く、G7やG8は、先進国との関係で「居心地が悪い」、
といった発言が多く、中国として、現在のG20の枠組みを評価し、これに積極的に関与していこうとする姿勢が顕著である。海外からのある研究者(華僑)も、中国に何か新たな国際秩序を作ろうとするインセンティヴはなく、既存の枠組みに参加しようとするプラグマティックなアプローチであるとしている。さらに同研究者は、中国が伝統的に採ってきた外交方針、韬光养晦政策(後ろに下がって目立たない)を見直すべきかどうかは、中国国内で議論中で、なお結論は出ておらず、当面は部分的にせよ同政策の影響を受けるかもしれないが、中国は明らかに以前にも増して、国際的枠組みに積極的に参加しようとしてきていることは明らかとしている。また、他の複数の海外からの参加者は、G20として恒久的事務局を作るべきで、それがG20での議論の連続性を保ち、またIMFなどが有している技術や情報を活用すべきであると、G20の強化・活用を強調している。
他方、一部の中国側研究者は、
(1)中国を非市場経済国家と見ている西側が、中国に対し、G20という言わば彼らの枠組みに入るよう主張したわけで、西側には忍耐と寛容が必要、先進国主導の構造に変化をもたらし、ガバナンスを調整するには一定の時間が必要、
(2)G7などに比べると適法性はあるが、何れ参加国は限定されており、過大な期待はすべきでない、
(3)金融危機がG20の枠組みをもたらしたが、危機の影響は各国様々、経済の初期条件、政策対応も異なっている。G20の中での新興国の立場・利害の違いは、先進国間のそれより大きく、その意味で、G20の先進国主導の構造は変わらない、
といった指摘をしている。ただこれらも、基本的にはG20への積極的な関与を前提としている。また、中国のある研究者は、この問題との関連で、日増しに大きくなる「中国責任論」を取り上げ、その範囲が広がり複雑化していること、要因のひとつに、韬光养晦政策の変化があること、種々指摘される「責任」の中味、性質をよく整理したうえで(先進国がその責任を転嫁しようとしているものかどうか、国内の話か対外的安定の話か等)、中国として戦略を考える必要があるとの警戒論も展開している。国連関係者は、当然予想されたことであるが、G20は有効であろうが、参加国が限定されており、意思決定面などでの効率性と公平性の関係をどう考えるべきかという問題は残るとの指摘である。
(1)中国を非市場経済国家と見ている西側が、中国に対し、G20という言わば彼らの枠組みに入るよう主張したわけで、西側には忍耐と寛容が必要、先進国主導の構造に変化をもたらし、ガバナンスを調整するには一定の時間が必要、
(2)G7などに比べると適法性はあるが、何れ参加国は限定されており、過大な期待はすべきでない、
(3)金融危機がG20の枠組みをもたらしたが、危機の影響は各国様々、経済の初期条件、政策対応も異なっている。G20の中での新興国の立場・利害の違いは、先進国間のそれより大きく、その意味で、G20の先進国主導の構造は変わらない、
といった指摘をしている。ただこれらも、基本的にはG20への積極的な関与を前提としている。また、中国のある研究者は、この問題との関連で、日増しに大きくなる「中国責任論」を取り上げ、その範囲が広がり複雑化していること、要因のひとつに、韬光养晦政策の変化があること、種々指摘される「責任」の中味、性質をよく整理したうえで(先進国がその責任を転嫁しようとしているものかどうか、国内の話か対外的安定の話か等)、中国として戦略を考える必要があるとの警戒論も展開している。国連関係者は、当然予想されたことであるが、G20は有効であろうが、参加国が限定されており、意思決定面などでの効率性と公平性の関係をどう考えるべきかという問題は残るとの指摘である。
シンクタンク・サミットのある参加者も指摘したように、大きく言えば、現在の世界経済は、これまで長らく米国を中心とする西側先進国主導の枠組みで、様々な事柄が議論され解決策が模索されてきた時代から、先進国経済の低迷、新興国の台頭という流れの中で、これまでの国際秩序が機能しなくなっている一方、新興国側も、先進国に代わって主導する、あるいは既存の秩序に代わる何か別の秩序を提示するまでには到っていないという、歴史的転換点にある。中国は、長年、先進国主導の枠組みに警戒し、地球環境問題など様々な事柄について、国連中心でやるべきと主張してきた。こうした中で、今回の二つの会議で見えたのは、中国は、一部問題は認めつつも、現状、中国としてはG20の枠組みが最も居心地が良く、これを通じて国際社会への影響力を行使しようとしている点だろう。中国の利益実現を図り、またおそらく課題に応じて、他の新興国と協調できる事柄は協調して、新興国全体としての発言力強化も図っていくと思われる。G20で、今後中国が他の新興国も巻き込んでどのような役割を果たしていこうとするか、目が離せない。
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