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変革に向けたビジョン再考のチャンス

2011年06月29日

経営コンサルティング部 主任コンサルタント 神谷 孝

半年ほど前の発表であるが、帝国データバンクの全国社長分析によると2010年の全国の社長の平均年齢は59才7ヶ月で、30年連続の上昇となったようである。

30年前は1980年であるが、当時の社長の平均年齢は52才であった。その平均像は、1928年生まれで、終戦を17才で迎え戦後の動乱期に青春時代を過ごした人たちである。おそらくは、彼らの多くが、高度成長期に事業を興し、もしくは、父親の事業を引き継ぎ、オイルショック等を経験しつつも、事業を拡大させてきた。社内的には、偉大な創業者として、もしくは2代目として事業を大きく発展させた功労者として、カリスマ性を帯びたリーダーであったのではないだろうか。

彼らは、日本経済の成長に伴い、全体のマーケットが成長する中で、自らの定めた事業領域をがむしゃらに突き進み、そして事業領域を広げながら企業規模を拡大する。それで、ほぼ間違いはなかった。経営力とは、実行する力であり、社員も社長の向く方向に一丸となり、現場力を高めてきた。

それを受け継いだ現在の社長の平均像は、1951年の戦後生まれで、30年前の平均像の子息に当たる年代である。在任期間を伸ばしてきた先代の経営者も後継に経営を任せるようになってきたという図式である。しかし、経済成長が鈍化した現在の事業環境は大きく変化した。既存のマーケットの成長を当てにすることはできず、企業成長実現には戦略性が重要な鍵を握っている。戦略とは、選択することであり、その結果捨てることであるが、先代の栄光があちこちに残っている社内で、大きな変革を伴う戦略の実行は容易ではないだろう。創業以来の事業、先代が確立した強みによる成功体験、これらはすべて社内に染み付いている。いかに事業性が乏しくなってきても「否定」できない聖域が存在する。そうした中で、現場力も次第に弱まる。そうしたケースが少なくない。

この社長分析は、全国121万人の社長を対象としたものであるが、このようなケースは上場企業においても決して少なくない。変革が求められているにも関わらず、とりあえず現状を維持していれば社員の反発もなく、大失敗もない。リーダーとして社内を率いることよりも、まとめることに注力してきた。

以前は、社長自身が経営理念であり、ビジョンであった。その社長に社員が牽引されてきた。今後は、経営理念やビジョンは、社長の外部に存在させなければならない。まずは、自社を改めて再定義してみてはいかがだろうか。いわゆる、ビジョンの再構築であり、進化である。社内で大いに議論し、外部に公表し説明する。社長は、その進化されたビジョンに向かって社員を率いるリーダーという役割を担う。そうした構造に変えていくことが変革の鍵となろう。

東日本大震災、及び福島原発事故は、日本人及び日本企業に様々な考え方の再考を促しているように思える。経営レベルでは、リスク管理、サプライチェーン、マーケティングなど再検討すべき課題も多い。これを変革のチャンスとすべく、これまでの常識を断ち切った議論によるビジョンの検討を改めて始めてはいかがだろうか。

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神谷 孝

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